不動産売買契約書とは?トラブルを防ぐセルフチェックリスト付き
不動産の売買契約書とは、不動産を売買する際に売主と買主で結ぶ契約書のことで、売買代金や支払期日、建物の状態などが細かく記されている書類のことです。
不動産を売却する時と購入する時は必ずこの不動産売買契約書を交わすことが義務づけられています。
この売買契約書は仲介業者が作成してくれるので、「仲介業者に任せていれば大丈夫だろう」と思う方もいらっしゃると思います。しかし、売買契約書は不動産売買の上でとても重要なものであり、何かトラブルが起こった際にはこの売買契約書に記載されている内容ですべてが判断されてしまいます。
口約束で交わした約束に効力はなく、売買契約書の中身がすべてなのです。
そのため、業者に任せっきりで売主と買主の当事者がしっかりと中身を確認せずに契約を結んでしまうと、
「契約書に書かれていなかったから損害賠償を支払わなければならない」
「契約書に書かれていないから解約したくてもできない」
といったトラブルになり自分の首を絞めることになります。
そういったトラブルがなくスムーズに不動産売買を進めるために、不動産売買契約書とはどういうものなのか詳しく知ることが大切です。
この記事では、
- 不動産売買契約書とは何なのか
- 不動産売買契約書が重要な理由
- 不動産売買契約書に記載される事項の説明
- 不動産売買契約書を作成する際にチェックするポイント
について解説していきます。
この記事を最後までお読みいただくと、不動産売買契約書について詳しく知ることができ、売買契約書に書かれていなかったために起こるトラブルを防ぐことができます。
不動産売買をされる方は、売買契約書について詳しく理解ができるようにぜひ最後までお読みになってくださいね。
[監修]宅地建物取引士
市野瀬 裕樹
中古マンション売買仲介を累計1200件以上監督。株式会社groove agentにおいて不動産売買の業務に3年従事。買い手をサポートしてきた経験を活かし、どうすれば高く売れるのか?を、買い手目線で不動産売却仲介のアドバイスを行う。
目次
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1.不動産売買契約書とは
冒頭でも触れたように不動産における売買契約書とは、売主と買主が売買契約を交わす際に当事者同士で取り決めた事項を記した書類のことで、売主と買主の双方にとって公平で安全な取引を行うために作成されます。
売買契約が成立すると、売主は所有権を移したり引き渡しなどの義務が発生し、買主は代金の支払い義務が生じます。この契約をした後に、売主か買主のどちらかの理由で契約が解除になると、違約金の支払いが必要になる場合があるので、この売買契約書は詳細まで細かく設定し、双方が納得した上で作成することが大切になります。
この売買契約書は、不動産業者が守るべき宅地建物取引業法の第37条に記されており、不動産の売買をする際は契約内容を書面で作成して交付することが義務付けられているのです。
通常の売買では不動産業者が間に入ることが多いため、売買契約書は不動産業者が作成しますが、契約書に書かれているかどうかで、売主と買主で後にトラブルになる可能性があるので、売主も売買契約書の内容をしっかりと把握しておきましょう。
2.不動産売買契約書は非常に重要
不動産売買契約書は不動産の売買において非常に重要なものです。
高額な取引となるためどうしてもトラブルに発展しやすく、もしトラブルが起こった際に解決の糸口となるのが売買契約書なのです。不動産売買はすべてこの売買契約書に基づき売買が行われるため、細かく定めておく必要があります。
例えばこのようなことがあったとします。
中古物件を購入する際に買主はクーラーが付いていると思っていましたが、購入した後にクーラーは付いていないということが分かりました。契約書にクーラーに関することがまったく書かれていなかったため、買主と売主は言った言わないの口約束でもめてしまいました。
もし契約書添付の付帯設備表でクーラーが付いているかどうか確認をしていたら、このようなトラブルにはならなかったでしょうし、トラブルになった際はどちらの責任かが明確です。仮に、もし契約書に「クーラーはついています」という文言がある場合は、売主はクーラーをつけなければなりません。
このように、何かトラブルがあった際には必ず不動産売買契約書に基づいて判断されるため、売買契約書は非常に重要です。トラブルを避けて自分を守るためにも、売買契約書の中身はしっかり把握しておきましょう。
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3.売買契約書の一般的な記載事項
売買契約書には一般的にこのようなことが記載されています。
1つ1つの内容をしっかり理解していないと契約書に記載漏れや確認漏れが生じ、のちのちトラブルになる重要な部分です。
それぞれどのようなものか詳しく解説していくので注意して確認してくださいね。
3-1.売買の目的物の表示
売買の対象となる不動産を、契約書に記載されている代金によって買主が買い取ることを規定しています。また、売買取引の対象となるものが何なのか以下の項目のように詳しく書く必要があります。
【戸建ての場合】
- 土地、建物の所在や地番
- 面積などの詳細情報
【マンションの場合】
- 区分所有建物の詳細情報
- 敷地権の目的たる土地の詳細情報
土地の面積は、登記簿に記載されたものと実際の面積が異なっている場合があり、売主が引き渡しまでに土地を実測することもあります。
実測をして、もし登記簿の面積と実際の面積が異なる場合は、その代金の差を清算することになります。清算する場合、一般的には当初の売買代金と面積に基づいた1㎡あたりの単価を用いて清算されます。
また隣人トラブルがあり、隣の土地との境を確認するのに時間がかかる場合があります。もし実測期日までに終わらなかった時はどうするかもあらかじめ決めておきましょう。
3-2.売買代金・支払い方法
売買代金や手付金、内金はどうするかなど、それぞれの金額や支払日、支払い方法について細かく記載します。
売買代金・手付金・内金の詳細を説明していきますね。
3-2-1.売買代金
売買代金の金額や支払い方法、支払日が記載されています。
支払日は通常は契約締結の時に手付金が支払われ、残りを引渡し時に支払うのが一般的です。支払い方法は手形か振り込みが一般的で、支払い方法はどうするのかも記載しておきましょう。
また、土地面積などの実測をして増減額を清算する場合は、どのように清算するかもあらかじめ決めておきましょう。
3-2-2.手付金の金額、支払日
手付金は、売買契約を結んだ時に証拠として買主から売主に支払われる売買代金の一部のことです。もし契約後に売主と買主どちらかの都合で解約する場合、この手付金をもって解除することができます。
【手付金の相場】
手付金は一般的に売買金額の5%~10%が相場となっています。売買金額の20%を超える額を手付金にすることは法律で禁止されています。
【手付金の種類】
手付金は手付金の意味合いによって以下の3種類で呼ばれます。
- 解約手付…買主都合で解約する時に手付金を放棄することで解除できること
- 違約手付…売主の事情で解約する場合に、預かっている手付金を買主に返すとともに、手付金と同額を支払うことで契約を解除できること
- 証約手付…売買契約が成立したことを示すために支払うこと
このように手付金は3種類の性質を持っており、この3種類の中でどの性質を持たせるかというのは売主と買主で話し合い契約書に記載しておく必要があります。また、複数の性質を持たせることも可能で、例えば「解約手付と違約手付の性質を持つ」とすることもできます。
もし契約書の中で手付金の種類について記載していなかった場合は、原則として「解約手付」の性質を持ちます。
売主が宅建業者の場合は、宅建業法により解約手付の性質を持つと規定されています。
下の図のように買主都合で解約する時は手付金を放棄することで解除でき、売主都合で解約する場合は手付金の返還+手付金と同額をプラスして支払うことで解除することができます。
手付金は契約を解除しなければならなくなった際に非常に重要ですので、しっかりと理解しておく必要があります。
手付金について詳しく知りたい方はこちらの記事もお読みになってください。
3-2-3.内金
内金とは、売買契約後に売買代金の一部を先に支払うお金のことです。手付金のように法律で決まっている訳ではないので、金額の決まりや法的な決まりはなく、一般的な売買ではあまり内金のやり取りはありません。
内金を支払う場合は、金額を売主と買主で決めて契約後から引き渡し日までの間に支払います。支払われた内金は売買代金に充当され、もし解約となった場合には戻ってきます。
内金を支払わない場合は、内金を支払わなかった分を住宅ローンとして支払うことになります。
3-3.所有権の移転・引き渡し
所有権の移転とは、司法書士に委任して買主への売り渡し証を発行し法務局へ登記申請を提出することです。
引渡しとは、売買物件にある売主の持ち物を撤去し買主に引き渡すことです。
所有権の移転時期は、買主が売主に対して売買代金の全額を支払い、売主が受けとった時になります。所有権の移転と引き渡しは同日に行うことが多いですが、売主と買主が合意した日が所有権の移転と引渡しの日になります。
期日の決まりはありませんが、契約書に期日を明記しましょう。
3-4.公租公課の精算
公租公課とは税金など公共の目的のために払う費用のことです。
不動産売買の際の公租公課は、印紙税や登録免許税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税(地方税)です。また、その他に管理費などの費用も清算することがあります。清算は引越しの日を基準にして日割りで計算されることが多いです。
清算方法は、買主が自分の負担分を売主に渡して売主がまとめて1年分を納税したり、仲介業者が売主と買主からそれぞれ負担する分を預かって支払うといった方法があります。
3-5.ローン特約
ローン特約とは、売買契約を結んだ後に住宅ローンの本審査の承認が下りずに契約を解除する場合、無条件で契約を白紙解除できる特約のことです。
売買契約を交わしたが、住宅ローンの審査に落ちてしまい代金が払えないので、やむを得なく契約を解除するということは少なくありません。通常は契約を交わした後に解約をする場合、違約金が発生しますが、このローン特約をつけておくことで、住宅ローンの審査に落ちたことを理由に解約する場合は違約金が発生せず解約できるのです。
住宅ローン特約による解約は大いにありえることですので、こちらの特約の内容は注意して作成しておく必要があります。この特約の内容を明確に記載していなかったためにトラブルになってしまった事例というのはけっこうあるのです。
住宅ローン特約について詳しく知りたい方はこちらの記事もお読みになってくださいね。
3-6.付帯設備などの引渡し
付帯設備とは、建物に付いている冷暖房や照明などの設備のことで、どの設備が付いているかを記入しておきます。
また、給湯関係や水回り、空調など経年劣化しやすいものは特にトラブルになりやすいので使用年数や状態など細かく記入しておく必要があります。付帯設備表に記入する設備は以下のようなものがあります。
【付帯設備表に記入する設備例】
- 給湯関係(電気・ガス・石油・太陽熱)
- キッチン、トイレ、お風呂の水回り
- エアコンや床暖房などの空調
- 室内の照明
- 収納
- 庭木や庭石
- インターホン
例えば先ほどのクーラーの事例のように、買主はクーラーが付いていると思っていたが、購入した後にクーラーは付いていないということが分かった場合などがあります。契約書にクーラーが付いているかついていないかがまったく書かれていないと、買主と売主は言った言わないの口約束でもめてしまいますよね。
もし付帯設備表でクーラーが付いているかどうか確認をしていたらトラブルにならなかったでしょうし、トラブルになった際はどちらの責任かが明確です。仮に、もし契約書に「クーラーはついています」という文言がある場合は、売主はクーラーをつけるか、クーラーの代金とその工事にかかる費用を支払う必要があります。
このように付帯設備は建物に付いている設備のことで、付いているものと付いていないものは何か、そのものの状態などを詳しく記載しておきましょう。
付帯設備表について詳しく知りたい方はコチラの記事もお読みになってくださいね。
3-7.契約違反による解除
売主か買主のどちらかが契約違反をした場合に解除する時の取り決めのことです。契約違反によって解除になる場合、違反をした方が違約金を支払うことが一般的です。
【違約金】
違約金の額は売主と買主で話し合って決めることができますが、おおよそ売買金額の10%~20%が相場となっています。
違約金の額が大きすぎると契約を解除したくても解除できないということになり、違約金の額が少なすぎると抑止力が無く、簡単に契約解除ができてしまうのでこれくらいの金額が多いようです。
このようにどちらかが契約違反をして解約する場合は、違約金が必要となり、違約金の額も明確にしておく必要があります。
3-8.契約不適合責任【瑕疵(かし)担保責任】
契約不適合責任とは、不動産売買が成立し買主に引き渡された後に、建物の状態や状況が売買契約書と異なっていた場合に、売主が一定期間負うべき責任のことです。
もともとは「瑕疵担保責任」というもので2020年4月の民法改正により「契約不適合責任」へ変更されましたが、不動産業界では現在も「瑕疵担保責任」と呼ばれることもあります。この民法改正により、中身も瑕疵担保責任より売主の責任範囲が広くなり、売主にとっては注意が必要なものです。
「瑕疵」とは建物の傷や欠陥のことを指す言葉で、この瑕疵とは目に見える不具合だけでなく、見えない瑕疵もあり、住みだして初めて分かるというものもあります。こういった住み始めてから気づいた不具合を契約時に知らされていなかった場合は、すべて瑕疵にあたります。
そういった瑕疵は宅地建物取引業法により、売主は必ず告知をしないといけないという「瑕疵の告知義務」が定められています。
売主はこの「瑕疵」についてしっかり理解しておかないと、契約後に瑕疵が見つかった場合、損害賠償を払わなければならなかったり、契約解除になってしまいますので注意が必要です。
これから、契約不適合責任について詳しく説明していきますので、特に売主の方はしっかり確認してくださいね。
3-8-1.契約不適合責任になるもの
契約不適合責任に問われるのは契約書の内容と異なるものかどうかというところです。売買契約書に記した内容と実際の内容が異なっていた場合は、買主は売主に責任を問うことができます。
例えば、契約書には「雨漏りがない」と書かれていたのに実際に住みはじめると雨漏りがあったとします。その場合、契約書の内容と異なるため買主は売主に報告し、売主が修繕する必要があるのです。
また仮に、契約前に売主と買主の間で雨漏りがあることを認知しており、修繕をしないと口約束をしていたとしても、売買契約書に「雨漏りがない」と記入があれば、売主は契約不適合責任を問われて修繕しなければならないのです。
このように契約不適合責任は売買契約書の中身で判断されるため、売主は契約書を結ぶ前に物件の状態をよく調べておき契約書に詳細を記入しておかなければなりません。
「契約不適合責任」は契約書の内容と合っているかどうかで判断すると分かりやすいですが、民法改正前の「瑕疵担保責任」の時の要素も含まれているので、そちらも把握しておく必要があります。
先ほど「見えない瑕疵」とお話ししましたが、見えない瑕疵には以下の4つがあります。
- 物理的瑕疵
- 法律的瑕疵
- 心理的瑕疵
- 環境的瑕疵
それぞれどのようなものか詳しく説明していきますね。
1.物理的瑕疵
- 雨漏り
- シロアリ被害
- 地盤沈下
- 危険物の埋蔵
- 耐震基準の不適合 等
2.法律的瑕疵
居住条件そのものに問題は無くても、法的に問題がある場合のことを指します。主に建築基準法・都市計画法・消防法に触れるケースが多いです。
例えば以下のようなことが挙げられます。
- 構造上の安全基準が満たされていない
- 容積率、建蔽率が法の基準に満たされていない
- 火災報知器がついていない
- 開発行為が認められていない「市街化調整区域」に建物が建っている
このように居住条件は問題が無くても、法的に問題があるものを法律的瑕疵と呼びます。
3.心理的瑕疵
心理的瑕疵は過去にその物件やその周辺で事件や事故、トラブルが起こったことを指します。心理的瑕疵のある物件は「瑕疵物件」「事故物件」と呼ばれ、一度は耳にしたことがある人も多いと思います。
心理的瑕疵物件は、物件自体に何か欠陥があったり法に触れるような状態でなくても、住む方が「ここには住むことができない」という心理的な抵抗がある場合は心理的瑕疵となります。
例えば以下のような場合が挙げられます。
- 過去にその物件で自殺・殺人・事故死があった
- 直接的に被害はないが、近所に反社会的勢力の事務所がある
心理的瑕疵はしっかりとした決まりが無く、住人が心理的に「ここには住めない」と感じたらそれは心理的瑕疵となります。
4.環境的瑕疵
環境的瑕疵は環境の問題で不快に感じることを指し、心理的瑕疵にも含まれることがあります。
具体的には以下のような場合が挙げられます。
- 鉄道や高速道路などが近くにあり騒音や振動がある
- 工場や加工場があり異臭がする
- 直接的な被害が無くても近くに嫌悪施設がある
【嫌悪施設の例】
ごみ焼却場、火葬場、下水処理場、高圧線鉄塔、墓地、ガソリンスタンド、精神科病院、刑務所、食肉処理施設、軍事施設、原子力発電所、廃墟、風俗営業など
このように周りの環境により不快に感じて「ここには住むことができない」と感じるとそれは環境的瑕疵となります。
3-8-2.契約不適合責任で買主が持つ5つの権利
契約不適合責任が発覚した場合、買主は5種類の請求ができる権利をもっています。
- 追完請求
- 代金の減額請求
- 催告解除
- 無催告解除
- 損害賠償請求
それぞれ詳しく説明していきますね。
1.追完請求
追完請求とは、契約と異なる部分に対して完全な給付を請求することです。
不動産での追完請求とは、「修理してください」という請求になります。先ほどの雨漏りの事例のように、「雨漏りはない」と書いてあったのに実際に雨漏りがあった場合は、修理を請求することができるのです。
このように契約書と異なる部分がある場合は、売主の責任として追完請求ができるのです。
2.代金の減額請求
代金の減額請求とは、買主が追完請求をしたにもかかわらず売主がそれに応えない場合に、修理の代わりに売買代金を減額してもらうというものです。
この減額請求は、そもそも修理ができないようなものであったり、履行の追完ができないもの(土地の面積が足りない)という場合も代金の請求ができます。
流れとしては、買主が期限を設けて追完請求を行い、それが行われなかった場合に代金の減額請求となります。直せないものに関しては、追完請求をせずに代金の減額請求をすることもできます。
代金の減額請求は直せるものは直し、直せない・直さないものに対して請求できる権利です。
3.催告解除
催告解除とは、追完請求をしても売主がそれに応じない場合に、購入をやめて売主に催告をして契約解除することです。
売主が追完請求に応じない場合、買主は代金の減額では納得できず「この物件の購入をやめたい」という場合も多くあります。また、売買代金を減額されても住めないような欠陥だったり、修理費が高額だったりする場合もあります。そのような場合に購入を止めることができるのです。
通常は契約後に解約をすると違約金がかかりますが、この催告解除の場合は契約がなかったものとなるため、違約金は無く、売主は売買代金を買主に返さなくてはなりません。
このように催告解除とは、追完請求に応じない場合や修復できないような状態の場合に、契約を取りやめることができるのです。
4.無催告解除
無催告解除とは、契約内容が異なり契約の目的を達成できない場合に、売主に催告を行わずに直ちに契約解除できるというものです。
この無催告解除というのは、瑕疵担保責任での契約解除を引き継いだものです。前項でお話しした瑕疵により、買主にとって契約の目的が達成できなかったり、売主の履行が期待できない・履行が不可能という場合に無催告解除をすることができます。
例えば以下のようなことが挙げられます。
- 以前にこの物件で事故死があったことを黙っていた
- 構造上の安全基準が満たされていない
- 近くに工場があり異臭がする
なお、詳しくは前項の瑕疵のところで詳しく解説しているのでチェックしてみてくださいね。
5.損害賠償請求
損害賠償請求とは、売主が故意に不具合を隠していたり、売主の過失でできた損害がある場合に買主が売主に対して損害賠償を請求できることです。
注意すべき点は、売主に故意・過失がない場合は損害賠償請求はできないということです。また、もし売主が損害賠償を支払う場合は、買主が物件購入のために支払った費用の負担だけでなく、その物件に住んでいた場合に得たであろう利益(転売利益や営業利益)も支払うことになります。
このように損害賠償請求とは、売主が故意に不具合を隠していたことによって生じた損害を償うことです。
3-8-3.契約不適合責任の期間
契約不適合責任は引渡しからある期間を過ぎるとその権利は失ってしまいます。
期間は、以下のように分けられます。
- 売主が宅建業者の場合
- 新築住宅のすべての売主
- 1と2のどちらも当てはまらない場合
それぞれ解説していきますね。
1.売主が宅建業者の場合
宅地建物取引業法の第40条により、売主が宅建業者の場合は、引渡しの日から2年間は契約不適合責任を負わなければいけません。
また、これに加えて買主は瑕疵に気づいてから1年以内に売主に報告をしなければ権利を失います。
2.新築住宅のすべての売主
新築を購入する場合、品確法第95、97条により10年間は契約不適合責任を負わなければいけません。この10年間は短縮することはできませんが、20年間に延長することはできます。
また、こちらも買主が瑕疵に気づいてから1年以内に売主に報告しなければ権利は失ってしまいます。
3.1と2のどちらも当てはまらない場合
売主が宅建業者でもなく、新築でもない場合は、10年間が契約不適合責任の期間となります。
しかし、この場合も買主が瑕疵に気づいてから1年以内に売主に報告しなければ権利は失ってしまいます。
4.売買契約書を作成する際の注意点
売買契約書は非常に重要なもので、トラブルにならないために細かく設定することはお分かりいただけたと思います。
一度売買契約書を結んでしまうと、そのあと契約を変えたり解除するのは難しいです。1つ1つの項目をしっかりと理解して、分からないことをうやむやにしないようにしましょう。
売買契約書を作成するときに注意した方が良いポイントをチェックシートにまとめました。売買契約書を結ぶ前にもう一度確認して抜け漏れがないようにしましょう。
4-1.売買代金の表示に関する注意点2つ
もし売買契約書に実際の売買金額と違った金額が記入されていて契約を締結してしまったら、売買契約書に書かれた金額が正しくなってしまいます。
また支払日を間違えており支払いが遅れてしまうと、違約金を支払うことになるので注意が必要です。
不動産売買での売買代金の額は非常に大きくなるので売買代金の額は正しいか、支払日はいつか間違いのないように確認しましょう。
4-2.手付金に関する注意点3つ
手付金の額は相場では売買代金の5%~10%となっており20%を超すことは法律で禁止されています。契約書に書かれている手付金の額は妥当な額か、手付金を支払う期日はいつか確認しましょう。
また手付金には3種類の意味があり、契約書に手付金の種類を記入しておかないとその意味を持たないので手付金の種類は何か確認し記載されているかチェックしましょう。
4-3.土地の測量に関する注意点2つ
土地の測量を行うかどうかは決められていないので、売買契約書を結ぶ前に測量を行うのか確認しましょう。測量をする場合は土地の増減が生じた場合に代金の清算をするのかどうか、清算する場合はどのように清算するのか確認しましょう。
4-4.所有権の移転と引渡し
引渡し日に売主から買主に引渡しになります。引越しなどに余裕を持った期日にしておかないと、その期日に買主へ引き渡せず遅れてしまうと売主は違約金を支払うことになったり、契約解除になったりする可能性があります。
引渡し日を決める時は無理なスケジュールでないか確認をしましょう。
4-5.公租公課の精算
公租公課の金額はいくらなのか間違えずに記載されているか確認しましょう。
また清算方法は買主が自分の負担分を売主に渡して売主がまとめて1年分を納税したり、仲介業者が売主と買主からそれぞれ負担する分を預かって支払うといった方法があるので、どのように清算するのか確認しましょう。
4-6.ローン特約
①買主のローン利用に無理はないか
ローンの金額は無理なく払える額なのか確認しましょう。
今は返済できると思っている金額でも、子供が増えて学費にお金がかかったり、突然病気になってしまい働けなくなってしまったりと長いローン返済の期間の中で何が起こるか分かりません。無理なく返済できる金額かどうか確認しましょう。
②融資金額、特約の期限、予定金利は記載されているか
希望の金額が満額下りるとは限らないので、融資金額がいくらを下回ったら解約するかというのも具体的に明記しておきましょう。
また特約の期日を記入していないと、住宅ローン特約がずっと有効となってしまい買主にとっては嬉しいですが、売主にとってはリスクでしかありません。期日が記入してあるか確認をしましょう。
予定の金利条件は、「金利が1.2%以上だったら購入をやめる」など具体的な金利の条件も確認しておきましょう。
③融資を申し込む予定の銀行名は明記されているか
融資を申し込む予定の銀行名を具体的に記入しておきましょう。
もし、〇〇銀行等などとあいまいに記入していると数社の住宅ローンが落ちたからと言って住宅ローン特約を適用することが難しくなります。
④特約で解除する場合の方法は記載されているか
住宅ローン特約を適用して解約する場合、売主への解除申請はどのようにするか確認しましょう。
4-7.付帯設備などの引渡し
エアコンや照明などの設備が付いているかを1つずつ明確に記載しておく必要があります。
中古物件の売買の場合は特に注意が必要で「これが付いていると思っていたのに付いていなかった」ということでトラブルになりやすいです。
また、給湯関係や水回りや空調は経年劣化しやすく、売買後にすぐ壊れてトラブルになることもあるので、使用年数や状態をあらかじめ確認をして記載をしておきましょう。
4-8.手付解除
売主と買主どちらかの事情で解約をしないといけない時に、手付解除できる期間を確認しましょう。
この期間を過ぎて解約する場合は手付金を放棄した上に、違約金を支払わなければならなくなります。手付解除の期間が明記されているか確認をしましょう。
4-9.契約違反による解除
違約金の額に決まりはありませんが、違約金の額が大きすぎると払えずに解除できないということになり、額が小さすぎると違約金の効力がないので妥当な額を設定しましょう。一般的には売買代金の10%~20%が相場です。
違約金の額は妥当なのか、金額に間違いはないか確認をしましょう。
4-10.契約不適合責任
買主に引き渡した後も、「契約の内容が違う」「こんな環境だとは思わなかった」などトラブルになる可能性はまだまだあります。責任期間は適切か確認しましょう。
また設備の状態や周りの状況など、瑕疵となりそうなものについては契約を結ぶ前にしっかりと確認し、契約書に詳しく記入するようにしましょう。
責任負担がどちらになるのかは契約書の内容がすべてですので詳しく書いておきましょうね。
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5.不安な時はリーガルチェックを依頼しよう
もし売買契約書の内容が不安な方は弁護士などに契約内容を確認してもらいましょう。これをリーガルチェックといいます。
契約書を結んでしまうと、それがたとえどんなに理不尽な契約書だったとしても、その契約に合意したことになり契約書の内容に従わなければなりません。そうならないために、契約書を結ぶ前にしっかりと確認をすることが重要です。
専門家である弁護士に内容を確認してもらうことで、安心して売買契約書を結ぶことができますよ。
6.まとめ
いかがだったでしょうか?不動産売買契約書とはどういうものか、契約書を結ぶ際に気を付けることなどが理解できたと思います。
最後にこの記事をまとめますと、
◉不動産売買契約書とは
不動産売買の際に売主と買主で取り決めた事項を記載してある書類のこと
◉不動産売買契約書はとっても重要であり、作成する理由は2つ
- トラブルを避けるため
◉売買契約書の一般的な記載事項は
- 売買目的物の表示
- 売買代金
- 所有権の移転
- 公租公課の精算
- ローン特約
- 付帯設備
- 契約違反による解除
- 契約不適合責任
◉売買契約書を結ぶ前にチェックリストでもう一度中身を確認する
◉不安な場合は弁護士にリーガルチェックを依頼する
この記事をもとに、あなたの不動産売買がトラブルなくスムーズに行えることを願っています。
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