【トラブル回避】重要事項説明書の詳しい内容や知っておくべき注意点
重要事項説明書とは、不動産取引を契約するかどうかを買主が正確に判断できるように、不動産の特性や取引条件などが詳細に書かれたものです。
そうなると、重要事項説明書は売主にとってあまり関係がなさそうですよね?
実際に、仲介業者には重要事項説明書の内容説明について、買主に対しては義務がありますが、売主に対しては必要ありません。
しかし、仲介業者が不動産を売却するために、マイナス面になる内容を重要事項説明書に記載しないことがあります。
このような買主の不利益となる不正が判明すると、不動産売却後に取引が破棄されることもあるので、売主側も重要事項説明書の内容を確認することが大切です。
トラブルなく不動産売却を行なうために、この記事では以下の内容について解説しています。
- 重要事項説明書とは
- 重要事項説明書に記載されている内容
- 売主が重要事項証明書について知っておくべきこと
- トラブルを避けるために売主が気をつけるべきこと
重要事項説明書の内容をわかりやすく紹介しているので、内容が難しいと感じている人もぜひ最後まで読んでください。
[監修]宅地建物取引士
市野瀬 裕樹
中古マンション売買仲介を累計1200件以上監督。株式会社groove agentにおいて不動産売買の業務に3年従事。買い手をサポートしてきた経験を活かし、どうすれば高く売れるのか?を、買い手目線で不動産売却仲介のアドバイスを行う。
目次
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1.重要事項説明書とは
冒頭でも紹介したように、重要事項説明書とは不動産取引を契約するかどうかを買主が正確に判断できるように、不動産の特性や取引条件などが詳細に書かれたものです。
例えば、
「土地に対してこれだけの大きさの家が建てられる」
「耐震調査済みで安全な不動産」
「固定資産税は◯円」
といった内容が記載されているので、買主にとって不動産取引の契約を進めるかを判断する材料となります。
そのため、売主側は重要事項説明書の確認を怠ってしまいがちですが、不動産取引でもっとも多いトラブルは「重要事項説明書に関すること」なので、売主も内容に不備や不正がないかを確認することが大切です。
重要事項説明書の不備や不正が発覚すると、取引がスムーズに進まず、最悪の場合取引が破棄されてしまうことがあります。
トラブルに発展すると売りたい不動産が売れない状態になってしまうので、重要事項説明書の内容確認は売主も必ず行ってください。
重要事項説明書は、買主側の利益を守るためだけでなく、不動産取引の契約後に「そんなことは聞いていない」などの、“言った・言ってない” といったトラブル回避にも役立ちます。
特に注意したいのが、仲介業者も不動産を早く売却したいので、買主から契約をもらうために不動産のマイナス面を記載しないことがあります。
このような行為は宅建業法に違反するので、不動産売却後であっても取引が破棄されてしまいます。
不動産売買トラブルを防ぐためにも、売主も重要事項説明書の内容を積極的に確認しましょう。
2.重要事項説明書に記載される内容
重要事項説明書を売主も確認することが大切ですが、内容が難しくて理解しにくいですよね?
不動産売却をスムーズに完了させるためには、必ず内容を確認してほしいので、重要事項説明書の内容を噛み砕いて紹介していきます。
重要事項説明書のフォーマットは規定がないので、今回は平成13年国土交通省が例として使用している重要事項説明書を参考に各項目を解説していきます。
出典:国土交通省「重要事項説明・書面交付制度の概要」
売主が確認すべき項目だけをわかりやすく解説しているので、重要事項説明書の難しい内容に、読むのを諦めてしまったという人もぜひ確認し直してください。
2-1.物件に関する権利関係の明示
「物件に関する権利関係の明示」は、取引する不動産の権利について書かれている項目です。
- どのような不動産なのか
- 不動産の所有者は誰なのか
- 土地に私道が含まれるかどうか
など、買主が安心して取引できる不動産であることを証明する内容が書かれています。
この項目には不動産登記の内容が記載されているので、以下赤枠の
出典:国土交通省
「登記記録に記録された事項」
「私道に関する負担に関する事項」
※フォーマットによっては事項の見出しが異なる場合があります。(以下同様)
この2つの項目を、登記内容と見比べて間違いや漏れがないかをチェックしてください。
2-2.物件に関する権利制限内容の明示
「物件に関する権利制限内容の明示」は、取引する土地をどのように利用できるのかが書かれている項目です。
- どのような建物を建てられる土地なのか
- どれくらいの大きさの建物を建てられるのか(建ぺい率・容積率)
など、買主はこの項目から、目的通りに利用できる土地なのかを判断することができます。
これらの内容が記載されているのは、以下赤枠の
出典:国土交通省
「都市計画法・建築基準法等の法令制限」という欄です。
専門的な項目になるので、売却する土地が将来道路になるなど法的な制限がある(都市計画法)のか、どれくらいの建物が建てられるのか(建ぺい率・容積率)といったことは、役所の建築指導課や都市計画課に確認してください。
2-3.物件の属性の明示
「物件の属性の明示」は、水道や電気などのライフラインの整備状況や、災害警戒区域かどうかについて書かれている項目です。
- ライフラインはすぐに使えるのか
- 災害区域かどうか
- 石綿(アスベスト)が使用されているか
- 耐震診断はおこなっているか
といった、安全に住むことができる場所なのかを判断する項目になります。
チェックする項目は、以下赤枠の
出典:国土交通省
「飲用水・電気・ガスの供給施設及び排水施設の整備状況」
「当該宅地建物が造成宅地防災区域内か否か」
「当該宅地建物が土砂災害警戒区域内か否か」
「当該宅地建物が津波災害警戒区域内か否か」
「石綿使用調査の内容」
「耐震診断の内容」
これらの内容を確認してください。
災害リスクに関する情報は、ハザードマップから各災害ごとに検索することができます。
石綿(アスベスト)調査や耐震調査は、売却する時に有利な情報になる可能性があるので、売却前に調べておくことをおすすめします。
調査をしなくても売却することはできるので、費用面での負担が大きい場合は省略しても大丈夫です。
2-4.取引条件(契約上の権利義務関係)の明示
「取引条件(契約上の権利義務関係)の明示」は、契約内容やお金に関する内容が書かれている項目です。
- 不動産の売却代金
- 手付金
- 契約を解除するときの内容
- 固定資産税
など、トラブルになりやすい契約内容やお金に関する内容を、具体的に記載する箇所になります。
こちらの内容は、以下赤枠の
出典:国土交通省
「取引条件に関する事項」に記載されているので、金額に間違いがないか・希望の条件がきちんと反映されているか確認しましょう。
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3.売主が重要事項証明書について知っておくべきこと
不動産取引でトラブルを回避するための重要事項説明書ですが、その内容だけでなく重要事項説明書のルールも知っておくことが大切です。
ルールを知らないと、「重要事項説明書が無効になってしまった」「重要事項説明書の説明がないまま買主に渡ってしまった」という失敗に繋がってしまいます。
そうならないためにも、知っておいてほしい重要事項説明書のルールが3つあります。
- 重要事項証明書の用意が不要なケースがある
- 重要事項説明書は宅建士しか作成できない
- 不動産会社から売主に対しての重要事項説明書の説明は義務ではない
それぞれの内容について詳しく解説していきます。
3-1.重要事項証明書の用意が不要なケースがある
不動産取引の契約前に義務付けられている重要事項説明書ですが、必ず交付と内容説明が必要というわけではありません。
このように、個人で不動産を売却する時に仲介業者を入れない場合は、重要事項説明書は必要ありません。
ケース1のように不動産業者に売却すると仲介にあたりそうですが、自分で不動産業者を探しているので仲介はなしに該当します。
逆に、ケース3やケース5のように、不動産業者や仲介業者に売却相手を探してもらう場合は、仲介ありに該当するので、重要事項説明書が必要となります。
仲介業者を挟むと基本的に重要事項説明書の交付・説明の義務が発生するので、必ず内容を確認しましょう。
より詳しくは、重要事項説明書の不要なケースと必要なケースについて書かれたこちらの記事をご確認ください。
3-2.重要事項説明書は宅建士しか作成できない
重要事項説明書は、不動産取引の専門家である宅建士の資格を持った人のみが作成することができます。
宅建士以外が作成した重要事項説明書は法的な効力はないので、正確な内容が書かれていたとしても、買主から契約を破棄することができます。
仲介業者を挟んでいると、重要事項説明書も作成してくれるのですが、仲介業者を挟んでいない個人同士の取引の場合は要注意。
この場合は重要事項説明書の交付は必要ありませんが、買主に「重要事項説明書を交付してほしい」と言われた場合、自分で宅建士に依頼する必要があります。
もちろん断ることもできますが、買主が安心して取引をすすめられるように重要事項説明書の作成を依頼しましょう。
宅建士に依頼した場合は、「物件調査+重要事項説明書と売買契約書の作成」が含まれるので、費用は10万円前後になります。
不動産やその周辺の詳細・契約内容などを文章として残すことができるので、後々のトラブルに発展しないためにも、多少費用はかかってしまいますが重要事項説明書の作成依頼がおすすめです。
3-3.不動産会社から売主に対しての重要事項説明書の説明は義務ではない
重要事項説明書の説明は、買主にのみ義務化されていて、売主に説明する義務はありません。
良心的な業者の場合は、買主に説明する前に売主にも説明をしてくれますが、売主側から説明を求めないと省かれてしまいがちです。
重要事項説明書を買主へ説明する前に売主も確認することが理想的なので、仲介業者に重要事項説明書の説明がほしいことを伝えておくと安心です。
すでに買主に説明が終わってしまっているケースもあるかと思いますが、それでも必ず内容を確認しましょう。
重要事項説明書は、内容に変更があった場合は改めて買主に説明する義務があるので、取引契約後でも確認を行い、間違いがあれば修正をすることが可能です。
後々のトラブルにならないように、取引契約後であっても重要事項説明書の確認をおすすめします。
4.トラブルを避けるために売主が重要事項説明書で気をつけるべきこと
不動産取引でトラブルを防ぐために重要事項説明書が交付されますが、それでも不動産取引でもっとも多いトラブルは重要事項説明書に関する内容となっています。
重要事項説明書の不備で、取引が長引いたり契約破棄になってしまうことは避けたいですよね?
スムーズに取引を進めるためにも、重要事項説明書で気をつけるべきことが2つあります。
- 重要事項説明書は細部まで必ずチェックする
- トラブルを避けたいなら不要なケースでも重要事項説明書は作成する
それぞれの内容について詳しく解説していきます。
4-1.重要事項説明書は細部まで必ずチェックする
重要事項説明書の内容は、正確な情報を記載しなければなりません。
不動産のマイナス面となる以下の内容も、仲介業者や宅建士に伝えてください。
このようなマイナス面は買主が契約をやめてしまう原因になることもありますが、それを隠して売買契約を結ぶことは違法です。
売主が上記のような事実を告知しないまま契約すると、契約解除だけでなく損害賠償義務を負うことになります。
損害賠償額は不動産の状況によりますが、不正行為によって生じた損害として約300万円支払った事例もあります。
もちろん告知をしなかった売主に責任があるので、仲介業者ではなく売主が損害賠償を支払います。
また、告知していたにもかかわらず、不動産の欠点を仲介業者が隠す場合もあるので、必ず重要事項説明書の内容を確認するようにしてください。
4-2.トラブルを避けたいなら不要なケースでも重要事項説明書は作成する
個人で不動産を売却する時に仲介業者を入れない場合は、重要事項説明書は必要ありません。
しかし、重要事項説明書は不動産やその周辺の詳細・契約内容などを文章として残すことができるので、後々のトラブルに発展しないためにも、重要事項説明書を交付することをおすすめします。
重要事項説明書があってもトラブルに発展することがあるので、ない場合はよりトラブルになりやすいことが想像に難くないかと思います。
重要事項説明書は宅建士に依頼することになり、作成費用の相場は10万円前後になります。
多少費用はかかってしまいますが、「言った・言っていない」といったトラブルを防ぐためにも、重要事項説明書が不要なケースでも交付をした方が安心です。
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5.まとめ
重要事項説明書について、重要なポイントをもう一度おさえておきましょう。
- 重要事項説明書とは、不動産取引を契約するかどうかを買主が正確に判断できるように、不動産の特性や取引条件などが詳細に書かれたもの
- 重要事項説明書に記載される内容
◯物件に関する権利関係の明示→不動産の権利について書かれている項目
◯物件に関する権利制限内容の明示→土地をどのように利用できるのか書かれている項目
◯物件の属性の明示→ライフラインの整備状況・災害警戒区域について書かれている項目
◯取引条件(契約上の権利義務関係)の明示→契約内容やお金に関する内容が書かれている項目
- 売主が重要事項証明書について知っておくべきこと
◯個人で不動産を売却する時に不動産会社を入れない場合は重要事項説明書が不要
◯業者に売却相手を探してもらう場合は重要事項説明書が必要
◯宅建士以外が作成した重要事項説明書は法的な効力がない
◯売主に対して重要事項説明書の説明は義務ではないため、売主側から説明を求める
- トラブルを避けるために売主が重要事項説明書で気をつけるべきこと
◯不動産の欠点を告知しなかった場合、契約破棄や損害賠償責任を負う可能性がある
◯トラブル回避のため不要なケースでも重要事項説明書を作成する
この記事をもとに、重要事項説明書の重要性を理解し、内容を確認する時の参考にしていただければ幸いです。
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