【税金シミュレーション】家の売却にかかる税金はいくら?ケーススタディで計算方法を紹介!特例&お得な節税方法も
「家の売却をする際にかかる税金にはどんなものがあるの?」
「不動産売却における節税の方法が知りたい!」
家を売却するにあたって、このように思う方もいるのではないでしょうか。不動産の売却は大きな金額になるからこそ、それにかかる税金も気になりますよね。
そこで、この記事では、家の売却にかかる税金の種類を紹介します。
譲渡所得税の計算方法や、具体的なシミュレーション例も併せて紹介しますので、家の売却における税金額や手残りを見積もる際にぜひご活用ください。
それでは、家を売却する際の税金ついて具体的に見ていきましょう。
[監修]宅地建物取引士 市野瀬 裕樹 中古マンション売買仲介を累計1200件以上監督。株式会社groove agentにおいて不動産売買の業務に3年従事。買い手をサポートしてきた経験を活かし、どうすれば高く売れるのか?を、買い手目線で不動産売却仲介のアドバイスを行う。
目次
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1.家の売却にかかる税金は4種類!
家の売却にかかる税金の種類は、以下のとおりです。
- 譲渡所得税
- 印紙税
- 登録免許税
- 消費税
家を売る際にかかる税金は種類が多く、計算も複雑です。
まずは各税金の特徴を知ることで、売却時の税金の全体像を理解しましょう。
1-1.譲渡所得税
譲渡所得税は、不動産の売却による利益に対して課される税金です。
この税金は所得税、住民税、復興特別所得税から成り立っており、所得税は国へ、住民税は地方自治体へ納めるもので、どちらも譲渡所得に対して課税されます。
また、東日本大震災の復興財源として、2037年までの期間限定で所得税額の2.1%が復興特別所得税として上乗せされます。
家を売却する際の税金では、譲渡所得税が最も大きな税負担となるでしょう。
具体的な計算方法は後述しますが、基本的に売却価格から取得費と諸経費を引いた利益に対して課税されることを覚えておきましょう。
1-2.印紙税
印紙税は、不動産売買契約書に必要な収入印紙にかかる税金で、契約金額に応じて税額が変動します。
印紙税は、契約書に正式な効力を持たせるために必要不可欠です。
契約金額が高くなるほど税額も上がるため、売買時には適切な金額の収入印紙を用意しなければなりません。
家を売却する際には、この印紙税も考慮に入れて準備しましょう。
一覧を以下の表にまとめたので、ぜひ参考にしてください。なお、令和9年3月31日までは軽減税率が適用され、通常の納税額の半分の納税額(一部を除く)で済みます。
参考:国税庁「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
国税庁:『「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の印紙税の軽減措置の延長について』
1-3.登録免許税
登録免許税は、不動産の所有権が移転する際に必要な登記手続きに伴う税金で、新しい所有者の名義を正式に登記するために不可欠です。
登録免許税の税率は登記の種類や不動産の価値によって変動します。
<登録免許税の税率一覧>
登録免許税は、固定資産税評価額に上記の税率をかけて計算します。
固定資産税評価額とは各市町村が算定し、3年に1度見直されるものになります。
より正確な登録免許税の負担額を知りたい場合は、税理士などの専門家に相談しても良いでしょう。
1-4.消費税
不動産売却自体に消費税はかかりませんが、仲介手数料などの諸費用には10%の消費税が適用されます。
例えば、3,000万円の家を売却する際、仲介手数料が「売却価格の3%+6万円」だと仮定すると、仲介手数料は10%の消費税換算で105万6千円の計算になります。
不動産取引の際は、物件価格だけではなく、これらの付随する費用も考慮に入れることが重要です。
2.家を売却した際の譲渡所得税の計算方法
家の売却で気になるのは、いくら税金がかかるかではないでしょうか。
ここでは、家の売却時にかかる税金の中でも大きな割合を占める譲渡所得税の計算方法を解説します。
正しい知識を身につけることで、家の売却にかかる税金の概算がわかるようになるでしょう。
2-1.譲渡所得税の基本的な計算式
譲渡所得税の計算は、売却価格から取得費と譲渡費用、特別控除を差し引いた金額に税率を掛けて行います。
具体的な計算式は、以下のとおりです。
譲渡所得税=(売却価格-取得費-譲渡費用-特別控除)×税率 |
売却価格は実勢価格に近いものが求められ、取得費には購入価格や関連費用、リフォーム代なども含まれます。
譲渡費用は売却時の諸経費を指し、特別控除は適用条件に合致する場合は加味して計算しましょう。
取得費が不明な場合は売却価格の5%を概算取得費として使用できます。
また、税率に関しては所有期間の年数によって異なります。詳しくは以下を参照ください。
参考:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」
所有期間は取得日から売却した年の1月1日までで計算します。
5年超の所有を意識して売却時期を検討することで、税負担を大幅に抑えられるでしょう。
2-2.見落としやすい項目
譲渡所得税の計算では、取得費と譲渡費用を正確に把握することが税負担軽減のカギを握ります。
そのため、以下のような見落としがちな項目の計上忘れがないよう注意して確認しましょう。
これらの項目を適切に計上することで、課税対象となる譲渡所得を減らせます。
税負担の軽減につながるため、関連する領収書は慎重に保管し、見落としがないようにしましょう。
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3.【具体例】4,000万円の家を売却した際のシミュレーション
税金の種類や譲渡所得税の計算方法はご理解いただけたと思います。
次に具体的なシミュレーションをもとに税金負担額の目安を確認していきましょう。
ここでは、4,000万円の家を売却した際の具体的な税金計算例を3つのケースで詳しく解説します。
シミュレーションをするうえでの前提条件は、以下のとおりです。
- 譲渡費用は200万円
- 3,000万円特別控除が適用されない
(3000万円特別控除については「4.家を売却する際に活用できる特例」で詳しく解説しています)
各ケースで適用できる特例や注意点もわかりやすく説明しているため、あなたの状況に近いシミュレーションを参考に、税額を計算してみてください。
3-1.2,000万円で購入した家を4,000万円で売却
まずは、2,000万円で購入した家を4,000万円で売却するケースを見ていきましょう。
この場合の譲渡所得は、以下の計算式で算出されます。
4,000万円-2,000万円-200万円=1,800万円 |
さらに、売却にかかる仲介手数料や印紙税は以下のようになります。
- 仲介手数料:4,000万円×3%+6万円+税=138.6万円
- 印紙税:4,000万円の売却価格の場合:1万円
今回の例では3,000万円の特別控除が適用されないため、譲渡所得税は以下の計算式によって算出されます。
(1,800万円-138.6万円-1万円)×譲渡所得税率 |
つまり、1,660.4万円に対して、譲渡所得税率がかかることになります。
短期譲渡所得と長期譲渡所得で300万円以上の差が生まれることがわかります。
3-2.5,000万円で購入した家を4,000万円で売却
次に、5,000万円の家を4,000万円で売却するケースを見ていきましょう。
この場合の譲渡所得は、以下の計算式で算出されます。
4,000万円-5,000万円-200万円=-1,200万円 |
今回の例のように損失が生じている場合、譲渡所得税がかからないだけではなく、特例を利用できる可能性があります。
「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の特例を活用すると、この損失を他の所得と相殺したり、将来の所得から控除したりできる場合があります。
参考:国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
ただし、この特例の適用には細かい条件があるため、税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
3-3.相続した家を4,000万円で売却
最後に、相続した家を2年後に4,000万円で売却するケースを見ていきましょう。
相続時の評価額を3,000万円とすると、この3,000万円が取得費となります。
この場合の譲渡所得は、以下の計算式で算出されます。
4,000万円-3,000万円-200万円=800万円 |
売却価格から取得費と譲渡費用を引くと、譲渡所得は800万円となります。
相続した不動産の売却では「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」も検討すべきです。
参考:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
この特例を使うと、相続時に支払った相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税の軽減につながる可能性があります。
特に、相続税が高額だった場合や、将来さらに高値で売却する可能性がある場合には、積極的に本特例を活用することをおすすめします。
具体的な適用条件については、税理士などの専門家に相談してみましょう。
4.家を売却する際に活用できる特例
家を売却する際に活用できる特例は、主に以下のとおりです。
- 3,000万円の特別控除
- 軽減税率の特例
- 買い替え特例
特例を上手に活用することで、家の売却にかかる税金を大幅に軽減できる可能性があります。予備知識としてしっかり押さえて賢く利用しましょう。
4-1.3,000万円の特別控除
居住用財産売却時の3,000万円特別控除は、節税効果の高い特例です。
この特例を利用すると、最大3,000万円まで譲渡所得から控除できます。
例えば、4,000万円の譲渡所得なら、1,000万円のみが課税対象になります。
ただし、譲渡所得が3,000万円未満の場合は、その金額が控除の上限になる点には注意が必要です。
また、居住用財産の譲渡損失に関する特例とは併用できない点も覚えておきましょう。
主な利用条件は以下のとおりです。
- 売却契約日まで住んでいたこと
- 退去後3年以内の売却であること
- 前年・前々年に同様の控除を使っていないこと
- 親族への売却でないこと
参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
4-2.軽減税率の特例
マイホームを売る際に、一定の要件に当てはまるときは、長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率の特例の適用を受けることができます。
この特例では、以下のような軽減税率が適用されます。
※所得税には復興特別所得税が含まれます。復興特別所得税は2011年の東日本大震災の復興支援の財源として使われる税金で、2037年まで所得税に加算される2.1%の加算分を指します。
例えば、1億円の長期譲渡所得の場合、通常であれば譲渡所得税は2,031万5千円となります。
しかし、この特例を活用すれば、譲渡所得税は以下のように算出されます。
- 6,000万円×14.21%=852万6千円
- (1億円-6,000万円)×20.315%=812万6千円
- 852万6千円+812万6千円=1,665万2千円
つまり、この特例を活用すれば、譲渡所得税は1,665万2千円となり、360万円以上の節税になります。
さらに、3,000万円特別控除との併用も可能なので、より大きな税負担軽減が見込めるでしょう。
また、主な適用条件は以下のとおりです。
- 所有期間が10年を超えること
- 売却時まで居住または退去後3年以内の売却であること
- 前年・前々年に同様の控除を使っていないこと
参考:国税庁「No.3305 マイホームを売った時の軽減税率の特例」
4-3.買い替え特例
住宅の買い替え特例は、一定の条件下で譲渡所得税の課税を繰り延べられる制度です。
例えば、3,000万円の家を売却して5,000万円の家を購入し、譲渡所得が2,000万円だった場合、全額の課税が繰り延べられます。
主な適用条件は以下のとおりです。
- 所有期間10年超の住宅である
- 1億円以下で売却している
- 新居が50㎡以上である
ただし、将来の売却時に譲渡所得が増える可能性や、3,000万円特別控除などとの併用不可といった注意点があるため、状況に応じて最適な選択をすることが重要です。
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5.家を売却する際の効果的な節税方法
家を売却する際の効果的な節税方法は、以下のとおりです。
- 売却のタイミングを考える
- 特例を最大限に活用する
- 取得費と譲渡費用を適切に計上する
これらの方法を組み合わせることで、数百万円単位の節税効果が期待できるかもしれません。
5-1.売却のタイミングを考える
不動産を売却するタイミングは、負担する税金額に大きく影響します。
まず、譲渡所得税は所有期間5年超で税率が39.63%から20.315%に下がるため、可能な限り5年超所有してから売却するのがよいでしょう。
さらに、10年超所有であれば軽減税率特例が適用可能となり、より大きな節税効果が期待できます。
加えて、不動産市況も重要な要素です。
不動産の市場価格が上昇傾向なのであれば、時期を考慮することで高値での売却の可能性がありますが、下落傾向なら早めの売却を検討すべきでしょう。
しかし、市況を読むなんてことはプロでも難しいところです。
たとえば株式市場も今後1年上がるのか下がるのかを多くの証券アナリストが展望を推測しますが、当たる確率は50%にも満たないと言われています。
よって、売る理由が整ったタイミングが最も良いタイミングです。
もっと上がるだろうと推測をめぐらし、その当てが外れて下落をしたなんてことになったら、時間もお金もロスしたことになります。ただし、売るタイミングが整った時点で売るのであれば、たとえもう少し待っていたら価格が上がった場合に金額のロスはあるのかもしれませんが、少なくとも時間のロスは防ぐことができるのです。
5-2.特例を最大限に活用する
特例を最大限活用するには、いくつかのポイントがあります。
まず、居住用財産売却時の3,000万円特別控除は、譲渡所得が3,000万円以下なら全額非課税の可能性があるため、積極的に活用すべきです。
次に、複数の特例の使い分けが重要です。
3,000万円特別控除および買い替え特例など、同時適用できない場合もあるため、自身の状況に合わせて最適な特例を選択する必要があります。
また、各特例の適用条件を事前に確認しておくことも大切です。
買い替え特例使用時は新居の取得価額が圧縮され、将来の売却時に税金が高くなる可能性があるため、長期的視点での検討が重要です。
これらのポイントを押さえ、自身の状況に合わせて特例を活用することで、効果的な節税が可能になります。
税理士などの専門家のアドバイスも参考にしながら、慎重に検討しましょう。
5-3.取得費と譲渡費用を適切に計上する
取得費と譲渡費用の適切な計上は、課税対象となる譲渡所得を減らす手段として有効です。
まず、家の購入時にかかった費用を詳細に洗い出し、不動産仲介手数料や登記費用、不動産取得税なども取得費に含めます。
ただし、所有期間中の増改築やリフォーム費用も取得費として計上できますが、修繕費は含められません。
また、売却時の譲渡費用も漏れなく計上しましょう。
仲介手数料、広告費、測量費用、不動産鑑定料、場合によっては解体費用も含まれます。
取得時の資料がない場合や相続物件の場合は、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」も選択可能なため、状況に応じて有利な選択肢を活用しましょう。
最後に、取得費や譲渡費用を正しく把握するためには全ての関連書類を適切に保管・整理することが重要です。
確定申告や税務調査に備え、証拠となる書類を用意しておくことで、スムーズな手続きが可能になります。
6.家を売却する際の3つの注意点
家を売却する際の注意点は、以下のとおりです。
- 確定申告の必要性と期限
- 固定資産税との関係
- 売却損が出た場合の処理
これらの注意点を事前に把握し、適切に対応することで、スムーズな売却が可能になるでしょう。
6-1.確定申告の必要性と期限
家の売却後の確定申告は、税金の有無に関わらず原則として行う必要があり、特に3,000万円特別控除などの特例適用時は必須となります。
申告期限は通常、売却翌年の2月16日から3月15日までで、期限超過は加算税や延滞税のリスクがあるため注意が必要です。
売却決定後はすぐに準備を開始し、必要書類を事前に確認・準備することが重要です。
複雑なケースでは税理士への相談も検討しましょう。
早めの準備と適切な対応により、スムーズな確定申告が可能になります。
売却時期に関わらず、年度内の売却なら翌年の確定申告期間を意識し、計画的に進めることが大切です。
6-2.固定資産税との関係
固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税されるため、年の途中で家を売却した場合、売主と買主の間で精算が必要です。
通常、売主が1年分の固定資産税を支払っているため、買主との間で適切な調整が求められます。
精算方法は、1月1日から引渡し日までを売主負担、それ以降を買主負担とすることが多く、一般的には売買契約書に明記されます。
対策として、まず売買契約書に固定資産税の精算方法を明確に記載することが重要です。
また、精算金額を正確に計算し、売却代金から差し引くなどの適切な処理を行うことも大切です。
この精算により、売主は自身が所有していた期間分のみの固定資産税を負担し、買主は購入後の期間分を負担することになります。
これにより、公平な費用負担が実現できるでしょう。
6-3.売却損が出た場合の処理
不動産売却で損失が出た場合、通常は他の所得との損益通算ができません。
しかし、特定の条件下では特例を活用して損益通算や繰越控除が可能です。
主な特例には「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」と「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」があります。
これらの特例を利用すると、他の所得から譲渡損失を差し引いたり、最大3年間損失を繰り越して控除したりできます。
参考:国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
参考:国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
対策として、まず売却前に損失の可能性がある場合は特例の適用条件を確認しましょう。
住宅ローンの残高など、特例適用に必要な条件を整えることも重要です。
損失が発生した場合は、必ず確定申告を行い、適切な特例を申請することが大切です。
これにより、税負担を軽減し、財務的な影響を最小限に抑えることができるでしょう。
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7.まとめ
家の売却にかかる税金は、譲渡所得税を中心に複数の種類があり、計算方法も複雑です。
本記事で紹介したシミュレーションや計算方法を参考に、あなたの不動産の売却における税金負担額の概算を算出してみてください。
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