【見本付き】専属専任媒介契約書の記載事項とチェックポイントを解説
「専属専任媒介契約書には何が書かれてあるの?」
「売主に不利な条件はない?」
こんな疑問を抱えている方のために、国が告示している専属専任媒介契約書の見本を基に記載内容について詳しくご紹介します。記載されているのは、以下の10点です。
- 甲乙の記名押印欄
- 成約に向けての義務
- 媒介に係る業務
- 建物状況調査を実施する者のあっせんの有無
- 違約金等
- 有効期間
- 約定報酬額
- 約定報酬の受領の時期
- 別表(目的物件の情報)
- 専属専任媒介契約約款
大切な物件を売却するための契約書であり、決して読み切れない量ではありませんので、必ず全文に目を通しておきましょう。
しかし、基礎知識がなければ、どの部分に注意を払えばよいか分からず、不安になってしまうと思います。
そこでこの記事では、
- 専属専任媒介契約書の見本
- 専属専任媒介契約書の記載事項
- 専属専任媒介契約書のチェックポイント
- 専属専任媒介契約書の書き方
- 専属専任媒介契約書の作成に必要な書類
- 契約後にチェックすべき不動産会社の売却活動
について、詳しくご説明します。
読めば、専属専任媒介契約書の全貌を理解し、不動産会社との契約の際にも的確に内容をチェックできるはずです。
契約後に気を付けるべきポイントも解説するので、ぜひ最後までチェックしてくださいね。
[監修]宅地建物取引士
市野瀬 裕樹
中古マンション売買仲介を累計1200件以上監督。株式会社groove agentにおいて不動産売買の業務に3年従事。買い手をサポートしてきた経験を活かし、どうすれば高く売れるのか?を、買い手目線で不動産売却仲介のアドバイスを行う。
目次
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1.国が公開している専属専任媒介契約書の見本
専属専任媒介契約書の全体像を知るために、まずは以下のリンクから国が公開している専属専任媒介契約書の見本をご覧ください。
この専属専任媒介契約書は、国土交通省が「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款」(以降、標準媒介契約約款)として告示したもので、消費者に不利益がないように押さえるべき契約事項が網羅されています。
正式に不動産売買の仲介契約を結ぶには、不動産会社は媒介契約書を作成し、記名押印を交わした上で依頼者に交付する必要があります。そのため、不動産会社は国土交通省が定めた標準媒介契約約款に基づいて契約書を作成するのが一般的です。
もし、不動産会社から渡された契約書に標準媒介契約約款と異なる点があれば、理由を聞いて、売主に不利益がないかを確認するようにしましょう。
2.専属専任媒介契約書の記載事項
国土交通省が告示している専属専任媒介契約書は、大きく分けて、「契約書」、「別表(目的物件の情報)」、「約款」の3つの要素で構成されています。
冒頭でお伝えした通り、内容は以下の10点です。
- 甲乙の記名押印欄
- 成約に向けての義務
- 媒介に係る業務
- 建物状況調査を実施する者のあっせんの有無
- 違約金等
- 有効期間
- 約定報酬額
- 約定報酬の受領の時期
- 別表(目的物件の情報)
- 専属専任媒介契約約款
契約書で定められている事項を理解するには、専属専任媒介契約の内容や特徴を知っておく必要があります。「よく知らない……」という方は、先に専属専任媒介契約について書かれたこちらの記事をお読みになることをおすすめします。
それでは、以下で専属専任媒介契約書の各事項について解説していきます。
2-1.甲乙の記名押印欄
契約書の一番最初には、「契約書及び専属専任媒介契約約款に基づき、目的物件に関する媒介契約を締結する」旨の記載とともに、甲乙それぞれの住所、氏名を書き、押印する欄があります。
「甲」は依頼者(本記事では、売主)、「乙」は宅地建物取引業者(本記事では、不動産会社)を指しています。
記名押印する前には、必ず内容を一通り確認するようにしましょう。
また、双方の記名押印後、不動産会社は遅滞なくこの契約書を売主に交付する義務があります。(宅建業法34条の2第1項)交付されない場合は、不動産会社へ確認するようにしましょう。
2-2.成約に向けての義務
「成約に向けての義務」では、不動産会社が売買契約を成立させるために行う営業努力について守るべき事項が書かれています。
契約成立のために不動産会社に課せられる義務の要点は、以下5点です。
- 不動産会社は、買主を探し契約を成立させるために、積極的に努力をする
- 不動産会社は売主に対し、 文書または電子メールのいずれかの方法で週1回以上の業務報告を行う
- 不動産会社は、目的物件の購入申し込みを受けたら、速やかに売主に報告する
- 不動産会社は、契約日から5営業日以内にレインズに登録し、売主に対して登録を証明する書面を交付する
- 売買が成立した場合、不動産会社はレインズへ成約報告を行う
専属専任媒介契約は他の媒介契約と比べ、この「成約に向けての義務」が最も厳しいです。そのため、不動産会社の販売活動も活発になり、物件が早く売れやすい傾向にあります。
2-3.媒介に係る業務
「媒介に係る業務」では、不動産会社が物件売買の仲介をするにあたり、行うべき業務が記載されています。
不動産会社が行うべき仲介業務の要点は、以下4点です。
- 不動産会社が売主に対し売却価格について意見する時は、その根拠を明確に説明する
- 売主が不動産会社に対し目的物件の購入を依頼した場合、不動産会社は契約書を交わす以前に重要事項について宅地建物取引士が記名押印した書面を交付して説明する
- 売買が成約した場合、不動産会社は速やかに書面を作成し、記名押印の上、売主と買主に交付する
- 不動産会社は、登記、決済手続など目的物件の引渡しに係る事務の補助を行う
売主にとって、不動産会社から提示される売却価格には大きな影響力があります。そのため、不動産会社から合理的な説明をしてもらえる確約があるのは、安心材料のひとつになりますね。
もし査定の段階でこの点が守られていない場合は、契約は見送ったほうが無難です。
2-4.建物状況調査を実施する者のあっせんの有無
「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」では、不動産会社が売主に対して、建物状況調査の制度概要を説明し、専門家との間をとりもったかどうかが記載されます。
建物状況調査とは、物件の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分に生じた劣化・不具合の有無を確認するための調査で、資格を有する専門家(既存住宅状況調査技術者)によって行われます。
建物状況調査を行うと、住宅の状況を把握した上で売買取引を行うことができ、取引後のトラブルも抑制できるため、平成30年4月に既存住宅のさらなる活用を狙って追加された条項です。
調査を実施するかどうかはあくまでも売主の意向に委ねられており、不動産会社は売主が希望した場合にのみあっせんを行います。
2-5.違約金等
「違約金等」では、売主が契約違反を起こし違約金が発生するケースについて、以下の通り記載されています。
売主が行った違反行為により、請求される可能性がある違約金は以下の2通りです。
- 報酬額に相当する違約金
- 契約履行に要した費用に相当する違約金
以下で、それぞれの違約金が発生するケースについて解説します。
2-5-1.報酬額に相当する違約金が発生するケース
以下いずれかの場合、不動産会社から売主に対して、契約書で合意した報酬額に相当する金額(消費税及び地方消費税を除く)を違約金として請求できます。
- 売主が、契約期間中に他の不動産会社へ目的物件の売買や交換の仲介を依頼し、成約したとき
- 売主が、自ら発見した買主と直接取引をしたとき
専属専任媒介契約では、仲介を依頼できる不動産会社は1社のみで、自己発見の買主との直接取引も禁じられているため、上記の2つのケースでは重いペナルティが課せられています。
2-5-2.契約履行に要した費用に相当する違約金が発生するケース
不動産会社に非がない理由で契約を解除する場合、不動産会社から売主に対して、契約の履行のために要した費用の償還を請求できます。
具体的には、以下のような費用が該当します。
- 広告費
- 通信費
- 交通費
専属専任媒介契約の契約期間は最大でも3か月なので、この違約金を避けたい場合は途中で解約せず、期間満了まで待つことをおすすめします。
2-6.有効期間
「有効期間」には、契約日から3か月以内の期間が記載されます。
「以内」なので、3か月より短い場合には問題ありませんが、3か月いっぱいの期間が記載されることが一般的です。
2-7.約定報酬額
「約定報酬額」には、売買契約が成立した場合に、売主から不動産会社に支払われる仲介手数料の金額が記載されます。
約定報酬額の総額には、「宅地建物取引業法」に基づき上限金額が規定されています。
そのため、約定報酬額が上限を超えていないか、また報酬額に対して不動産会社と合意している売却活動は適正かなど、契約前にチェックする必要があります。詳しくは、「3-6.不動産会社への報酬額と支払い時期は適正か」で解説しますので、こちらもご確認ください。
2-8.約定報酬の受領の時期
「約定報酬の受領の時期」には、売主から不動産会社に仲介手数料を支払う時期が記載されます。
約款上、不動産会社は売買契約に際して、宅地建物取引業法に定められた書面を作成し当事者に交付した後でなければ、報酬を受領することはできません。
国土交通省は、売買契約締結時に約定報酬額の50%相当額、決済・引渡し時に残りの50%相当額を請求することを推奨しています。
しかし、不動産会社によっては、以下のように支払い時期を記載する場合があります。
- 決済、引渡し時に請求。つまり、買主から売却金を全額受け取り、物件を引き渡せる状態の時。
- 売買契約締結時に全額請求。この場合、買主から売却金を全額受け取る前である可能性が高いので、売主の持ち出しで支払えるかどうか、確認が必要です。
2-9.別表(目的物件の情報)
専属専任媒介契約書の別表には、売主が売却したい物件の情報が記載されます。
以下は国土交通省が告示している別表ですが、不動産会社が作成したものだと多少フォーマットが異なることがあります。
別表に含まれているのは、以下4つの情報です。
- 所有者や所在地
- 目的物件の表示
- 売り出し価格
- 希望する条件
以下で解説します。
2-9-1.所有者や所在地
売却する物件について、以下の3点が記載されます。
- 所有者の住所、氏名
- 登記名義人の住所、氏名
- 所在地
「登記名義人」とは、登記上、不動産の所有権・賃貸権・抵当権などを持つと記載されている人です。基本的に、「所有者」と一致します。
もし登記名義人が既に亡くなった方のままで実際の所有者と一致しない場合は、売買契約をする前に名義変更を行う必要があります。
2-9-2.目的物件の表示
売却する物件の種類に合わせ、以下の項目が記載されます。
●土地
- 土地の広さ(実測、公簿)
- 地目(土地の用途。宅地・田・畑・山林・雑種地・その他のうち、いずれか)
- 権利内容(所有権・借地権のうち、いずれか)
●建物
- 建物の広さ(建築面積、延面積)
- 建物の種類
- 建物の構造
- 間取り
●マンション
- マンションの名称、階数、部屋番号
- マンションの構造
- マンションのタイプ(LDK、DK)、専有面積
- 共有持分
目的物件に関する情報は、基本的に売主側から提供することになるため、あらかじめ詳細が確認できる登記事項証明書(登記簿謄本)を準備しておくと良いでしょう。
2-9-3.売り出し価格
売主の希望価格や不動産会社の査定額を踏まえ、最終的に決定した売り出し価格が以下の項目に記載されます。
- 本体価額
- 消費税額及び地方消費税額の合計額
- 媒介価額
本体価額と消費税額及び地方消費税額の合計が媒介価格であり、売り出し価格の総額です。必ず契約前に確認しましょう。
2-9-4.希望する条件
あまり知られていませんが、媒介契約は不動産を購入する際にも締結します。「希望する条件」は、物件を購入したい人が使用する欄なので、売主の方は気にしなくてOKです。
2-10.専属専任媒介契約約款
契約書の最後に綴られている「専属専任媒介契約約款」には、契約書に書かれている内容がより細かく、具体的に記載されています。その目的は、以下の2点です。
- 契約の締結に際して定めるべき事項を明確にする
- 契約の履行のために遵守すべき事項を明確にする
不動産会社が契約書を作成する場合も、国土交通省が告示している約款に基づくことで、標準的な契約事項が網羅できるようになっています。
2021年11月時点で、約款は全18条で構成されています。
ここでは、2-1.~2-9.で説明した内容と重複せず、約款の中でのみ記載されている以下8つの条項をご紹介します。
- 媒介価額の変更の助言等(第5条)
- 報酬の受領の時期(第9条)
- 特別依頼に係る費用(第10条)
- 直接取引(第11条)
- 更新(第14条)
- 契約の解除(第15条、第16条)
- 反社会的勢力の排除(第17条)
- 特約(第18条)
以下で詳しく見ていきましょう。
2-10-1.媒介価額の変更の助言等(第5条)
「媒介価額の変更の助言等」では、物件の売却価格を変更する場合に、不動産会社や売主が負う義務について記載されています。要点は以下3点です。
- 不動産会社が売主に対し、売却価格の変更を助言する場合には、地価や物価の変動などの根拠を示さなければならない
- 売主が売却価格を変更したい場合、不動産会社にその旨を知らせる。さらに、価格を引き上げる場合は、不動産会社の承諾を得る必要がある
- 不動産会社が売却価格の変更を断る場合は、その根拠を示さなければならない
2-10-2.報酬の受領の時期(第9条)
「報酬の受領の時期」では、売買契約が成立した際に、売主から不動産会社へ支払う報酬について、時期や返還の条件が記載されています。要点は以下2点です。
- 不動産会社は、売買契約の成立に際して、宅地建物取引業法第37条に定められた書面を作成し当事者に交付した後でなければ、報酬を受け取ることはできない
- 融資の不成立を解除条件として結ばれた売買契約で、融資の不成立が決まり契約が解除された場合、不動産会社は報酬の全額を返還しなければならない
2点目の融資の不成立を契約の解除条件としているか否か(いわゆる、ローン特約)は、売買契約を結ぶ際の契約書を参照することになります。ローン特約がついた売買契約において、ローン不成立で契約が白紙になった場合、売主は不動産会社から仲介手数料を全額返還してもらうことが可能です。
2-10-3.特別依頼に係る費用(第10条)
「特別依頼に係る費用」では、売主から不動産会社に対し、特別に依頼した広告の掲載料金や、遠隔地への出張旅費は、売主の負担となる旨が記載されています。
こうした特別な依頼にかかった費用は、成約の有無に関わらず請求可能とされています。
ただし、レインズへの登録はもちろん、通常の広告、物件の調査等の費用は、特別依頼にはあたらないので安心してください。
また、国土交通省の運用ガイドによると、売主側から特別に広告宣伝や遠隔地への出張の依頼を行った場合、不動産会社はあらかじめ請求する費用の見積りを説明してから実行すべきだと記載されています。
2-10-4.直接取引(第11条)
「直接取引」では、専属専任媒介契約の有効期間が切れた後の直接取引について言及されています。
契約の有効期間の満了後2年以内は、売主が不動産会社の紹介によって知り合った相手と直接取引をした場合に、不動産会社は売主に対して報酬を請求できます。報酬の金額は、不動産会社が契約の成立に寄与した割合に応じた相当額とされています。
2-10-5.更新(第14条)
「更新」では、専属専任媒介契約の有効期間満了時の更新について記載されています。要点は以下3点です。
- 専属専任媒介契約の有効期間は、売主と不動産会社の合意に基づき更新できる
- 専属専任媒介契約の更新は、有効期間の満了に際し、売主から不動産会社へ申し出る
- 有効期間の更新に当たり、売主と不動産会社間で別段の合意がなされなかったときは、従前の契約と同一内容の契約が成立したものとみなす
3つ目の事項は自動更新を意味する訳ではありませんが、契約期間の満了と共に解約する場合は、不動産会社に一報を入れましょう。文面が残るよう、メールで連絡することをおすすめします。
2-10-6.契約の解除(第15条、第16条)
「契約の解除」では、売主や不動産会社がペナルティを負わずに契約を解除できる場合について記載されています。違約金なしで契約を解除できるのは、以下4つのケースです。
- 売主、あるいは不動産会社が専属専任媒介契約の定める義務を履行しないため、相手方が期間を定めて催告しても、履行されなかった場合
- 不動産会社が専属専任媒介契約に係る業務を誠実に遂行しない場合
- 不動産会社が専属専任媒介契約に係る重要な事項について、事実を告げない、あるいは不実のことを告げた場合
- 不動産会社が、宅地建物取引業に関して不正な行為をした場合
媒介契約は売主と不動産会社の信頼関係によって成立するため、背信行為があった場合には契約の解除が認められています。
不動産会社が意図的にレインズに物件情報を登録しない、他の不動産会社を通して購入の相談があっても虚偽の情報を伝えて断ってしまう、といった「囲い込み」行為も、第16条に抵触するため、売主は契約を解除することができます。
2-10-7.反社会的勢力の排除(第17条)
「反社会的勢力の排除」では、売主あるいは不動産会社が反社会的勢力ではないことを証明するために、以下の事項を確約する内容が記載されています。
- 自らが反社会的勢力ではないこと
- 自らの役員(業務を執行する社員 、取締役、執行役又はこれらに準ずる者)が反社会的勢力ではないこと
- 反社会的勢力に自らの名義を利用させていないこと
- 契約期間中に、脅迫的な言動、暴力、偽計、業務妨害、信用を毀損する行為を行わないこと
上記いずれかの事項に違反した場合、相手方は催告なしで契約を解除することができます。
また、売主が違反した場合、不動産会社は売主に対して、契約書に記載されている報酬額(消費税額及び地方消費税額を除く)に相当する違約金を請求することができます。
暴力団などの反社会的勢力を排除することを目的に、平成23年6月以降に盛り込まれるようになった条項です。
2-10-8.特約(第18条)
約款の最後に書かれている「特約」では、約款に定められていない事項について以下2点が言及されています。
- 約款に定めがない事項は、売主と不動産会社で協議して定めることができる
- 約款に反する特例で、売主に不利なものは無効である
例えば、不動産会社が売主に対し、約定報酬額を超える違約金を請求できる旨の特約を追記していたとしても、売主に不利に働く内容なので契約として認められません。
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3.専属専任媒介契約書のチェックポイント
専属専任媒介契約を結ぶにあたり、売主と不動産会社の間で契約書を交わします。その際には、契約書のポイントを押さえ、注意深くチェックしましょう。
契約を結ぶ際に使用するのは、不動産会社が作成した契約書です。国土交通省のガイドラインでは、告示されている標準媒介契約約款を使用して書面を作成するよう指導していますが、「義務」ではありません。また、契約後の売却活動は、締結した専属専任媒介契約書に基づいて行われます。
そのため、事前の注意を怠ってトラブルになることがないように、契約書の内容はしっかり確認すべきです。
特に注意すべき専属専任媒介契約書のチェックポイントは、以下の7つです。
以下で詳しくご説明します。
3-1.標準媒介契約約款に基づくか
不動産会社が媒介契約書を作成するにあたり、「標準媒介契約約款に基づく契約であるか否か」を明記することが義務付けられています。
以下イメージ図の通り、書面の右上に「この媒介契約は、国土交通省が定めた標準媒介契約約款に基づく契約です。」または「この媒介契約は、国土交通省が定めた標準媒介契約約款に基づく契約ではありません。」と表示されます。
先述の通り、国土交通省は媒介契約書を作成する際には、標準媒介契約約款を使用するよう指導しているので、ほとんどの場合はこれに基づいています。
しかし、「義務」ではなく、標準媒介契約約款に基づかない契約書も有り得るため、以下の2点をチェックしましょう。
- 契約書右上の標準媒介契約約款に基づくか否かの表記
- 基づかない場合、その理由や標準媒介契約約款と照らし合わせて不明点がないか
また、標準媒介契約約款に基づいている場合でも、売主と不動産会社で協議して追記をすることが可能です。約款に書かれていなくても、取り決めることで契約の締結や履行がスムーズにいくことがあれば、不動会社と相談して追記しましょう。
3-2.媒介契約の種類は「専属専任媒介契約」か
以下イメージ図の通り、契約書には媒介契約の種類が明記されています。
不動産会社に仲介を依頼する媒介契約には、「一般媒介契約」、「専任媒介契約」、「専属専任媒介契約」の3種類があります。
媒介契約の種類が異なると、売主や不動産会社の義務が変わってしまうため、必ず専属専任媒介契約で間違いないかを確認しましょう。
3-3.物件情報は正確か
ご自身が売却を依頼した物件について、「2-9.別表(目的物件の情報)」に書かれている内容に誤りがないかを確認しましょう。
不動産会社は契約書に記載された物件情報を元にレインズや不動産サイトに掲載したり、広告を用いて宣伝活動を行ったりします。もし誤った情報が掲載された場合、買主とトラブルになる危険性があるため、注意が必要です。
3-4.売り出し価格は合意済みか
別表の「2-9-3.売り出し価格」に書かれている金額で販売活動が行われます。
売主の希望販売価格と、不動産会社が行った査定の結果を踏まえ、合意した金額が「媒介価額」の欄に記載されているかを必ずチェックしましょう。
3-5.仲介業務の内容は合意済みか
不動産会社が行う仲介業務については、双方の認識の相違がないように目を通す必要があります。
特に「2-2.成約に向けての義務」に含まれる以下の3点は、専属専任媒介契約において不動産会社に義務づけられているので、書面に明記されているか確認しましょう。
- 契約から5営業日以内にレインズに登録する
- 週に1回以上業務報告を行う
- 業務報告の手段(文書、あるいはメール)
また、売却活動について不動産会社と合意したことが記載されているかもチェックし、適宜追記してもらいましょう。
3-6.不動産会社への報酬額と支払い時期は適正か
売買契約が成立した際に売主から不動産会社へ支払う報酬の金額や支払い時期は、トラブルになりやすい項目なので、必ず契約締結前に確認しましょう。
「2-7.約定報酬額」に記載される報酬額は、「宅地建物取引業法」により以下の通り上限が規定されています。
不動産会社は必ずしも上限いっぱいに請求できるわけではありません。具体的にどんな売却活動を行うかを把握した上で、協議して決めるようにしましょう。
また、仲介手数料は大きな金額なので、自分の持ち出しでは払えない場合もあります。そのため、「2-8.約定報酬の受領の時期」の事前確認が必要です。
標準媒介契約約款では、不動産会社が宅地建物取引業法第37条に定められる書面を作成し、売買契約が成立した当事者に交付した後でなければ、報酬を受領することはできないと定められています。もしそれ以前に支払うよう書かれていた場合は、記名押印前に必ず質問し、修正しましょう。
3-7.契約期間は3か月以内か
専属専任媒介契約の場合、「宅地建物取引業法」により、契約期間が3か月を超えることは認められていません。(3か月より短い場合は問題ありません)
「2-6.有効期間」が3か月を超えていないか確認しましょう。
また、有効期間満了時に契約を更新するか否かは、売主から不動産会社へ申し出るものであり、自動更新ではありません。「2-10-5.更新(第14条)」に、標準媒介契約約款とは異なる記載がないかチェックが必要です。
実際に更新するかどうかは、満了時に不動産会社の売却活動や報告を振り返り、売主自身でしっかり判断しましょう。
4.専属専任媒介契約書の書き方
売主が専属専任媒介契約書に記入するのは、甲欄の住所や氏名のみであることが一般的です。
「3.専属専任媒介契約書のチェックポイント」でご説明した内容を確認した上で、記名押印をしましょう。
押印の際は実印ではなく、認印でOKです。シャチハタでは不可なので、注意しましょう。
また、別表に記載される物件の情報は、通常売主から提供します。次章を参照し必要な書類を揃えて、正しい情報を提出しましょう。
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5.専属専任媒介契約書の作成に必要な書類
一般的に、売却する物件の情報を不動産会社に提示する時や、契約を結ぶのに必要な書類は、以下の通りです。
*登記情報提供サービス:インターネット上で不動産の登記情報が閲覧できる有料サービス。
これら以外にも、不動産会社から指示があれば資料を持参するようにしましょう。
また、過去に不動産の状態を確認し、耐震診断報告書、地盤調査報告書、アスベスト使用調査報告書などが手元にある場合は、アピールポイントになり得ます。不動産会社に見せておくと良いでしょう。
6.契約後は必ず不動産会社の売却活動をチェックしよう
専属専任媒介契約では、ひとつの不動産会社に売却活動のすべてを一任します。そのため、信頼できる不動産会社に依頼するはずですが、契約後も油断はできません。
なぜなら、「囲い込み」と呼ばれる“意図的に他の不動産会社に物件を取り扱わせないようにする行為”を、行なっている業者が会社規模に関わらず存在しているからです。
不動産会社が囲い込みを行う理由は、自社で売主と買主の双方の仲介を行うためです。これを「両手仲介」と言い、不動産会社は多くの仲介手数料を得ることができます。
一方、買主の仲介は別の不動産会社が行う場合は、「片手仲介」と呼ばれます。
より多くの報酬を得たい不動産会社が行う囲い込みの手口は、以下のような内容です。
- レインズに登録しない
- 不動産サイトに掲載しない
- 他の不動産会社から問い合わせがきても、「商談中」など理由をつけて断る
囲い込みをされると、当然見込み顧客へ紹介される機会が少なくなり、売主は希望通りの時期や値段で販売できなくなってしまいます。場合によっては、囲い込みをしている不動産会社から「売れないのは、価格のせい」と言われ、値引きしてしまうこともあります。
こうした事態を避けるためにも、売主は契約後、不動産会社の活動内容に注意を払うようにしましょう。
6-1.「囲い込み」のチェックポイント
囲い込みをされていないかチェックするポイントは、以下の3点です。
1.レインズに公開されているか レインズへの登録証明書に記載されたIDとパスワードを使って「売却依頼主物件確認」ページから登録内容を確認しましょう。取引状況は「公開中」になっているか、間取り図やアピールポイントが掲載されているかをチェックします。 2.不動産サイトに公開されているか SUUMOやHOME’Sなどの掲載状況を確認します。物件の魅力が伝わる写真や紹介文になっているかどうかもチェックしましょう。 3.内覧の予約が入っているか レインズに公開されているのに、全く問い合わせがない場合、不動産会社が他社からの問い合わせをシャットアウトしている可能性があります。 不信感が募った場合は、最終手段として他の不動産会社に相談し、そこから物件について問い合わせてもらう、という方法もあります。 |
レインズや不動産サイトに公開されていない場合には、状況がわかる画面のキャプチャをとっておきましょう。後々不動産会社に確認する際に、事実確認の材料になります。
6-2.「囲い込み」されていたら
3つのチェックポイントに基づき確認し、不動産会社が囲い込みを行っている疑いがある場合の対応方法は、主に以下2つです。
●不動産会社へ確認
●宅建指導課へ相談
以下で詳しくご説明します。
6-2-1.不動産会社へ確認
囲い込みの疑いがあるものの、確信がもてない場合は、まず不動産会社へ確認してみましょう。
この際、売主が確認したレインズや不動産サイトのキャプチャなど、事実確認のための材料があると良いです。手ぶらだと、不動産会社から誤魔化されてしまう可能性や、売主の画面の見方が誤っている可能性もあるため、確認当時の画面を不動産会社に見てもらうのが確実です。
約款の15条では、「契約が履行されていない場合、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは、専属専任媒介契約を解除することができる」旨が定められています。そのため、売主が不動産会社の営業活動が不十分である旨の指摘をした場合、しばらく猶予が欲しいと交渉される可能性があります。
ヤキモキする方もいらっしゃるかもしれませんが、「6-1.囲い込みのチェックポイント」や事実確認のとれる資料を元に指摘すれば、不動産会社も回答せざるを得ません。売主側が不安に思っている点を真剣に説明し、それに対し不動産会社が納得のいく説明をしてくれるかどうか、をまずは確認しましょう。
不動産会社に確認や相談をした結果、囲い込みされていることが明確になり、契約を解除したい場合には、以下2通りの対応方法があります。
- 契約期間の満了まで待ち、更新はしない
- 約款の第16条に基づき、契約解除
不動産会社からの引き留めが激しく、契約解除までもっていくのに大きな労力を要するようであれば、3か月の契約解除を待ち、更新しないというのが波風を立てない方法です。有効期間が終わるまでの間に、満了後の売却計画を立てるなど、下準備をしておきましょう。
一刻も早く解約したい場合は、「2-10-6.契約の解除(第15条、第16条)」に該当するとして、売主は違約金なしで契約を解除することができます。
この場合は、契約している不動産会社へ「解除事由に当たるため、解約したい」とはっきり意思を伝えましょう。事前の話し合いを経て、売主が契約を解除したい正当な理由を説明している状態であれば、余程怪しい不動産会社でない限り解約の手続きをとってくれます。
また、解約の合意がとれたら、必ず書面を作成してもらいましょう。新しい媒介契約先で売買成立したのに、後になって解除を申し出た不動産会社から違約金を請求される……といったトラブルを防ぐことができます。
6-2-2.宅建指導課へ相談
不動産会社との話し合いが進まない場合は、都道府県の宅建指導課や宅建指導班に相談しましょう。
「宅地建物取引業法」に基づき、違反行為を行っている業者に対して行政指導を入れるとともに、記録を残してくれます。
東京都の場合は、以下に問い合わせ先が掲載されています。「不動産取引(売買・賃貸)のうち、宅地建物取引業法の規制対象となる内容についての相談」を参照してください。
不動産会社が行政指導を受けた事例には、以下のようなケースがあります。
- 専属専任媒介契約を結んだにもかかわらず、5営業日以内にレインズへの登録を行わなかった
- 売主に対し、レインズへの登録証明書を交付しなかった
- 不動産情報サイトに掲載していた物件広告について、宅建指導課からの質問に応じなかった
- 媒介契約の更新には依頼者の申し出が必要にもかかわらず、初回の契約締結時に、2回目以降の全ての媒介契約書面を交わした
内容によっては民事だと整理される場合もありますが、素人にその区別をつけるのは難しいです。状況の整理をするためにも、まずは行政機関の窓口を活用することをおすすめします。
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7.まとめ
いかがでしたか? 専属専任媒介契約書について理解が深まり、締結前にチェックすべき点が分かったのではないでしょうか。
最後に、この記事の内容をまとめましょう。
◎国が公開している専属専任媒介契約書の見本
◎専属専任媒介契約書の記載事項
- 甲乙の記名押印欄
- 成約に向けての義務
- 媒介に係る業務
- 建物状況調査を実施する者のあっせんの有無
- 違約金等
- 有効期間
- 約定報酬額
- 約定報酬の受領の時期
- 別表(目的物件の情報)
- 専属専任媒介契約約款
◎専属専任媒介契約書の7つのチェックポイント
- 標準媒介契約約款に基づくか
- 媒介契約の種類は「専属専任媒介契約」か
- 物件情報は正確か
- 売り出し価格は合意済みか
- 仲介業務の内容は合意済みか
- 不動産会社への報酬額と支払い時期は適正か
- 契約期間は3か月以内か
◎通常、売主が専属専任媒介契約書に記入するのは、甲欄の住所や氏名のみ
◎専属専任媒介契約書の作成に必須なのは、以下3点
- 本人確認書類
- 認印
- 登記済権利証、または登記識別情報
◎契約後にチェックすべき不動産会社の売却活動
- レインズに公開されているか
- 不動産サイトに公開されているか
- 内覧の予約が入っているか
◎囲い込みされていたときには、以下いずれかで対応
- 不動産会社へ確認
- 宅建指導課へ相談
以上です。
この記事を参考に、あなたの売却活動が円滑に進むことを願っています。
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