中古マンションのキッチンは移動できる!条件と4つのアイデアを紹介
中古マンションを買ったら、オシャレなキッチンにしたい。
暗くて寂しいキッチンではなく、リビングとつながるオープンな雰囲気で過ごしたい。
暮らしの中心ともいえる場所だからこそ、新居でのキッチンはしたい暮らしがかなう空間にしたいですよね。
しかし、いざ中古物件を見ると「この奥まった場所にあるキッチンは移動できるのか」「どんな物件でもキッチンの移動は可能なのか……」といったことがわからないと思います。
この記事では、既存のキッチンの印象や過ごし方を変えるカギとなる「中古マンションのキッチンはどのくらい移動できるのか」について詳しく解説します。
専門的な知識を備えることで、間取図を見ながら新しい暮らしを想像する楽しさが増したり、仲介担当者とより具体的に会話することができるようになりますよ。
目次
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1.キッチン移動のしやすさは3つの条件で決まる
キッチンは単体では移動できない。床下の排水管と天井の排気ダクトの経路によって移動距離が決まる
一見、キッチンの移動は難しそうと思うかもしれませんが、実はリノベによって比較的柔軟に移動することが可能です。
キッチンをどの程度移動できるかは、主に以下3つの条件で決まります。
- マンションの「建物の構造」
- 床下の配管をパイプスペースからどれだけ伸ばせるか
- 天井の「換気ダクトの経路」
キッチンは日々水を使ったり換気が行われる場所のため、床下の「排水」や天井の「排気」の経路を確保せねばならず、キッチン単体で移動することができません。
そのため、マンション自体の構造上の特徴に加え、床下の配管と天井の換気ダクトに注目することで、どの程度キッチンの移動が可能なのかを把握することができるのです。
次章より、キッチン移動の制約になり得る3つのポイントについて詳しく解説していきましょう。
2.キッチン移動しやすいのは「ラーメン構造」の物件
左は太い柱のあるラーメン構造。右がところどころに耐力壁(赤い線)のある壁式構造。耐力壁は撤去できないため、耐力壁の範囲内での移動に限定される
1つ目の条件は「建物の構造」です。
マンションの構造には、「ラーメン構造」と「壁式構造」の2種類があり、一般的に、ラーメン構造の方がキッチン移動はしやすいといえます。
2つの構造の大きな違いは建物を支える構造です。ラーメン構造は柱と梁で建物を支えていますが、壁式構造の建物を支えているのは、その名のとおり「壁」であり、建物を支えている壁のことを「耐力壁」といいます。
この耐力壁の有無がキッチンの移動に影響します。
キッチン移動がしやすい「ラーメン構造」
ラーメン構造の場合、住戸内の間仕切り壁を建物の構造とは関係なく撤去できます。
そのため住戸内部をすべて解体して、イチからつくりなおすリノベやキッチン移動の自由度は壁式構造より高くなります。
ラーメン構造についての詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。
キッチンの移動に制限が出やすい「壁式構造」
一方、壁式構造のマンションの部屋には柱や梁の出っ張りがなく空間がスッキリしていますが、リノベに関しては耐力壁が制約となります。
壁式構造では、耐力壁が構造躯体の一部でありコンクリートでできているため、撤去することができないだけでなく、配管を通すために穴を新たに空けることもできません。
そのため、耐力壁で囲まれた範囲内ならキッチンの移動は可能ですが、制約が多いといえます。
しかし、移動に制限があるからと壁式構造を最初から避ける必要はありません。気に入った物件が壁式構造だった場合は、移動しない分、使い勝手のよさやよりデザイン性の高いキッチンづくりに注力することができるからです。
壁式構造での具体的なリノベアイデアは、4章をご覧ください。
壁式構造の耐力壁は壁を叩くことで判断可能壁式構造の壁はすべての壁が撤去できないわけではありません。 そのため、検討しているのが壁式構造のマンションだった場合は、間仕切り壁のうち撤去できない耐力壁がどれなのかを確認することが大切です。 間仕切り壁は、軽くコンコンと叩けばコンクリートかどうかがわかります。より正確に知りたい場合は、リノベ会社に同行してもらって確認するのが間違いないでしょう。 |
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3.床下の排水管を伸ばせる距離でキッチンの移動距離も決まる
共用配管に排水を流すためには、1mの移動につき約1cm以上排水管の勾配が必要。床下に勾配を取るためのスペースがない場合は、床を上げることで移動可能
キッチンがどこまで移動できるかを知る手がかりは、パイプスペース(PS)の位置とキッチンとの距離に注目することが重要です。
排水は床下のヨコ引き配管を通ってPSにある共用配管に流されますが、排水管に勾配がないと水は流れません。
水を流すための排水管の勾配は1mにつきおよそ1cm以上の勾配が必要です。
そのため、キッチンの床と躯体のコンクリートの間には、上図のように排水管に勾配をつけるためのスペースが確保されており、「スペース内でPSからどこまで排水管を伸ばせるか」でキッチンの移動距離が決まるのです。
床とコンクリートにスペースがある状態は「二重床」と呼ばれており、キッチンの床下は二重床になっているケースが一般的です。
二重床だけどスペースが足りない、またはそもそもスペースがない(直床)の場合は床を上げてスペースを確保する工事を行うことでキッチンを移動することができます。
3-1.キッチン移動は5mくらいまでが目安
床下にスペースがない物件でも、キッチン1mの移動につき1cm以上床を上げればキッチン移動は可能になるため、床が上がるのを許容できればキッチン移動は比較的容易にできるといえます。
一般的な住戸の広さなら、5mあればかなり大掛かりな移動が可能になるため、キッチン移動の1つの目安としてください。
3-2.築古マンションの中には床上げの際に注意したい物件も
左:キッチンの床下が二重床で排水管を通す空間のある一般的なケース
右:コンクリートスラブを貫いて階下の天井裏に配管されているケース
中古マンションは、住戸全体が二重床になっているケースや水まわり部分だけ二重床になっている物件が一般的です。
そのため、壁式構造などの構造的な制約や3章で解説する換気ダクトの制限がない限りは、前述のとおりリノベによってキッチン移動は比較的容易にできます。
しかし、古いマンションの中には稀に、上図のように排水管が床下のコンクリートスラブを貫いて階下の天井裏に延びて、共用配管につながっている物件があります。
階下まで配管が及んでいるため、キッチン移動が難しい気がしますが、この場合も床上げをすることでキッチンの移動は可能です。
ただ、こういったケースは築年数が古く天井が低い物件に多いものです。
そのため、床を上げると室内に圧迫感が出てしまうことがあるため、キッチン移動の際には天井高も留意しながら検討しましょう。
3-3.床を上げずにキッチンを移動するリノベアイデアもある!
キッチンに腰壁を造作してその中に配管を通せば、パイプスペース(PS)までの排水経路を確保できる
キッチンを移動するためには床上げが必要そうだけど、天井が低い物件だし、床はあまり上げたくない……。
そんな中古マンションに出合った場合は、キッチンの排水管を床下に通すのではなく、壁内を通すというリノベアイデアが有効です。
例えば、図のようにキッチン前に腰壁(対面キッチンの際に造作されるシンクが隠れる程度の高さの壁)を設け、その中に排水管を通して、パイプスペースまで持っていくなどの方法です。
床上げに制限がある場合も、このように別の方法で工夫できるのがリノベの強みですね。
4.キッチン移動は換気ダクトの経路を要チェック
室内にある梁とダクトの経路を確認することで、キッチン移動の範囲を想像できる
キッチンを移動するためには、レンジフードと換気ダクトの移動もセットになります。
料理中に出るニオイや油、蒸気などはレンジフードから換気ダクトを通って、外壁に取り付けられた換気口から外部に排出されるためです。
しかし、構造躯体である耐力壁や梁は、新たに換気ダクトを通すために穴を空けることはできません。
そのため、上図のように梁を超えてレンジフードと換気ダクトを移動することができないため、梁の範囲内にレンジフードを収める必要があるのです。
4-1.換気ダクトの制限下でもリノベアイデアで払拭できる
しかし、だからといってガッカリする必要はありません。
下記の事例のように、梁の存在でレンジフードの換気ダクトの位置に制限があっても、キッチンの向きを変えてオープンな空間にすることで、開放感とデザイン性の高いキッチンに生まれ変わることも可能ですよ。
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5.制約下でもここまで変わる!キッチンリノベBefore→After
ここまでは、中古マンションを買ってキッチン移動を考える際は
- 「壁式構造」の物件はキッチン移動に制限がある
- 床下の排水管がどこまで伸ばせるかによってキッチンの移動距離が決まる
- 梁を超えてのキッチン移動は、排気ダクトの経路により難しい
といった、3つの制約があることをお伝えしてきました。
しかし、制限に目を向けるより、既存の状態と仲良くしながら新しいスタイルを生み出せるのがリノベの醍醐味です。
ワクワクできる、4つの事例をみていきましょう。
【事例1】キッチン移動はせず、吊戸棚撤去と造作で開放感プラス
構造:ラーメン構造/専有面積:72.2㎡/築年月:2007年2月
キッチンの位置を大きく変えなくても、壁などの撤去やデザイン性の変化で心地よいキッチンに変更することは可能です。
この事例は、キッチンの移動はしていませんが、吊戸棚を撤去し開放感のあるキッチンに変更。
キッチン前に腰壁を設け、黒いモザイクタイルを貼ってアクセントをつけました。
床材はキッチン部分を木目のフローリング、リビングを白いPタイルと使い分けています。
デザインにメリハリをつけることで、LDKが以前とはガラリと変わった雰囲気に。
また、キッチンを移動をしていないため、既存のリビング全体に敷き詰めてあった床暖房をそのまま活かすことができました。
【事例2】壁式構造を逆手に、作業カウンター付きの厨房風キッチンへ
構造:壁式構造/専有面積:72.83㎡/築年月:1983年 3月
キッチン移動が難しい物件でも、独立した空間を逆手に取ったキッチンスタイルも可能です。
この事例は、住戸中央の水まわりスペースが、耐力壁と下がり壁(構造の一部)に囲まれた壁式構造の物件。
耐力壁と下がり壁は動かせないので、排水や換気経路が確保しにくく、キッチンの位置移動は難しい物件でした。
そのため、もとの位置にL字型キッチンをオリジナルで造作。調理や配膳に使える大きなカウンターを併設し厨房風のキッチンに生まれ変わりました。
カウンターがリビングとの接点となり、下がり壁がありながらも開放感のある、人が集まりやすい空間に
【事例3】一部床上げでキッチンを移動し、広々LDKスタイルに
構造:ラーメン構造/専有面積:61.60平米/築年月:1982年11月
こちらの事例は床下に配管スペースがない場所へキッチンを移動した例です。
写真のようにキッチンだけ床を上げています。
壁で囲まれた独立型のキッチンを大きく移動させることで、一体感のあるLDKになりました。
レンジフードは梁を超えられないため、梁の直下にレンジフードが来るように設置して、換気ダクトは小梁の内側に添わせて配管しています。梁に隠れて、換気ダクトもすっきりしていますね。
【事例4】壁伝いの配管で、キッチンを暮らしの真ん中に
構造:ラーメン構造/専有面積:70.79平米/築年月:1974年 7月
事例3のようにキッチンの床を上げる方法以外でも、キッチンを大きく移動することは可能です。
こちらの事例は、床の躯体にカーペット直張りの物件だったため、床下に空間がなく、そのままではキッチンを移動するための配管をすることができませんでした。
そのため、排水管の延長はキッチン造作の際に設けたカウンターを這わせ、壁の中に配管しています。全く露出せず、浴室近くのPSまで延長しています。
壁付けだったキッチンを住戸の中央に移動し、L字型のキッチンを造作。
床上げをしない方法で、フラットな床で空間との一体感のある、LDKを見渡せる快適なキッチンになりました。
6.キッチンの移動にかかる費用の目安は?
最後に、中古物件を買ってキッチンを移動するしないを判断する上で重要な費用について解説します。
6-1.もとの位置で機器交換だけなら90万円~100万円程度
もとの位置のままキッチンを交換するだけで、内装もそのままにするなら、既存キッチンの撤去費、新しいキッチンの組み立て、設置費程度で済み、費用の8割程度はキッチン本体の価格が占めます。
仮に70万円のシステムキッチンを導入した場合は、工事費を合わせて、合計90万円~100万円程度(税・諸経費込み)になります。
システムキッチンの価格帯は幅広いので、それによって費用が増減し、造作キッチンの場合は仕様しだいで価格が変わります。
6-2.位置を移動すると150万円~250万円程度
キッチンの位置を移動すると、既存キッチンの撤去費に加えて、床の解体、配管・換気ダクトの延長工事、電気工事、内装工事などがからんできて、関連工事費が多くなります。
キッチン本体のグレードや工事面積にもよりますが、全体で200万円~250万円程度(税・諸経費込み)をみておくとよいでしょう。
※工事面積が10~15平米(約6畳~9畳)の場合
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7.まとめ
ここまで述べてきたように、キッチンの移動はマンションの構造や配管の状況、換気ダクトの経路といった影響を受けて、どの程度移動できるのかが変わってきます。
中古物件を見る際に、より玄人な目線で見極められるよう事前知識を備えつつ、詳細を把握したい際には、物件見学時にリノベ会社に同行してもらい、どんなプランが可能なのかを聞いておくのがよいでしょう。
既存の制約と仲良くすることで、よりよいプランに出合えるのがリノベの醍醐味なので、制約条件を理解しつつも囚われすぎることなく、予算やエリアなど変えられない条件を大事にしてください。
その上で、自分の理想のキッチンがかなう物件を選びましょう。
スムナラでは、建築士監修のもと、中古物件を買う前に知っておきたい注意点や、中古を買ってリノベする際のポイントやアイデアを紹介しています。
リノベーションに構造や管理規約の制約はつきもの。制約を味方につけ、アイデアの幅を広げましょう。
イラスト/長岡伸行 紹介事例/ゼロリノベ