天井の低さが気になる物件は「天井リノベ」で広がりとデザイン性をUPしよう
中古マンションを比較検討していると、天井が低く圧迫感を感じる物件に出合うことがあります。そんなとき、この物件を選んで大丈夫かな?と躊躇することがあるかもしれません。
しかし、その対処法のひとつとして「リノベで天井の高さを上げる」という方法があることをご存知でしょうか。
天井を上げる、という選択は単に室内に広がりを与えるだけでなく、住まいのデザイン性をアップする上でも有効な方法です。
なんとなく目に入っているのに普段はそこまで気にならない天井は、あまり凝った意匠を見かけない部分なので、普段は意識しない人も多いでしょう。
しかし、中古探しの際に天井の低さが気になったのであれば、それを逆手に、低さの解消はもちろんのこと、天井をひとつのデザインとして楽しんでみてはいかがでしょうか。
この記事では、中古マンションで気になりがちな天井の高さとリノべ―ションの可能性について紹介します。
目次
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1.圧迫感のある中古マンションは「天井上げ」を検討するのも手
天井を躯体まで目いっぱい上げた例。現しの換気ダクトでデザイン性もUP
天井の低さが気になる物件に出合ったとしても、天井高はリフォームやリノベーションで上げられるケースもあり、そうすることで室内の圧迫感を軽減することが可能です。
室内の開放感という面では、窓からの景色や、間取りを重視する方が効果は高くなりますが、天井を上げることもその一助になるでしょう。
また、現し天井は、天井裏にあったダクトレールやライティングレールなどがむき出しになったり、既存で隠れていた梁があらわになるため、一般的な天井とは異なる、個性的なデザインをつくれるのも大きな魅力です。
せっかく気に入った物件が出てきたのに、天井の低さが気になるから、という理由で候補からはじく判断をするのはもったいないので、まずは天井が上げられるかどうか確認するのがオススメです。
次章から詳しく解説していきましょう。
2.天井が上げられる物件タイプと見分け方
天井が低い物件に出合った際は、天井を上げれる物件かどうかを事前に見極めて、取れる選択肢を広げることが可能です。
まずは、
- 一般的な中古マンションの天井の高さ
- 天井が上げられる物件のタイプ
- 天井が上げられる物件の見分け方
について詳しく解説していきましょう。
2-1.中古マンションの天井の高さは2300㎜~2400㎜が多い
なぜ古いマンションを見たときに「天井が低い」と感じるのでしょうか。
理由は、天井の高さは古いマンションほど低めの傾向にあるからです。
床から天井までの高さ(天井高)は、居室として使う場所の天井は2100mm以上と建築基準法で定められています。
換気扇が埋まっている関係で水まわりの天井高は少し低めのことも多いですが、築20年~30年程度のマンションの居室部分は、天井高が2300㎜~2400㎜程度が一般的です。
一方、今どきのマンションは天井高が2500㎜以上と天井が高いマンションも多くあります。
そのため、今住んでいる家が比較的築浅の場合は、実際に古めのマンションを見た時にちょっと圧迫感を感じるかもしれません。
中古マンションを比較する場合は、築年数に注目した上で天井高を確認してみると良いでしょう。
2-2.構造上、天井が上げられるのは「二重天井」の物件
天井裏がある二重天井は、躯体までの範囲で天井を上げることができる。二重天井と直天井の物件の割合はおおよそ6:4と二重天井の方が多い
天井の構造には、「二重天井」と「直天井(じかてんじょう)」があり、天井を上げることができるのは二重天井の物件です。
コンクリートの躯体と天井までに天井裏がある構造を「二重天井」といい、天井裏の懐(ふところ)寸法の深さ次第で10㎝程度(物件により前後します)、天井を上げられることが多いです。
対して、躯体に直接クロスを貼っている「直天井(じかてんじょう)」の場合は、すでに空間の上限なのでそれ以上天井高を上げることはできません。
二重天井と直天井の物件の割合は、おおよそ6:4程度なので、天井を上げられる物件の方が多いといえます。
2-3.天井が上げられる「二重天井」の見分け方
物件探しで目にできる資料では、二重天井かどうかは表示されていないことが多いので、実際に現地で確認することになります。
現地では、メジャーを天井まで延ばし、コツコツと軽く当ててみてください。
コンクリートが詰まったような重い音がするなら直天井、中が空洞で音が響くようなら二重天井です。
ダウンライトがついた天井は二重天井なので、見分ける際の目安にしてみてください。
ただ、二重天井の場合でも、実際に開けてみるまでは天井裏の懐にどれだけ余裕があり、何センチ天井を上げられるかは判断ができないことは留意しておきましょう。
2-4.最上階の住戸は天井を上げるのは不向き
二重天井の住戸であっても、マンションの最上階では天井を上げることは得策とはいえません。
最上階は外気の影響を受けやすいため、部屋の天井裏に断熱材が入っています。天井裏を撤去して断熱材も取ってしまうと、夏は暑く、冬は寒い室内になり住み心地が悪くなってしまいます。
なお、外断熱を採用している最上階の物件の場合、最上階でも天井を上げられる可能性があるため、詳しくは仲介担当者に確認しましょう。
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3.天井を上げる費用の目安
天井を上げるのにプラスになるリノベ費用は、広さによっても異なりますが、約12畳程度の部屋の場合、天井の解体撤去費や内装を含めると約15万円〜35万円程度となります。
なお、間取りを大きく変更したい場合は、既存の火災報知器の位置を移動する必要があります。その場合、費用が5~10万円アップすることを留意しておきましょう。
4.天井を上げるリノベのデメリットとその対処法
天井を上げるという選択は、空間にゆとりを生み出したり、普通の物件にはないオリジナル空間をつくれるという魅力的なメリットがある一方、デメリットもあります。
天井を上げることによるデメリットは主に音環境と温熱環境が上げられます。
デメリットとその対処法についてもしっかりと理解した上でプランに取り入れるかを判断することが大切です。
デメリット①:上階の音が聞こえやすくなる
現し天井にすると、上階の音が聞こえやすくなる可能性があり、こちらの音も上階に届きやすくなります。
音の感じ方には個人差がありますから、気になりやすい人には不向きです。
音は上下の階で家の中の音の量に差がある場合に気になることが多いもの。仮に今は気にならずとも、上階の住人は引っ越しで入れ替わることもありますので、その点は心づもりをしておきましょう。
<対処法> 音が気になる人が天井を上げる場合は、現し天井ではなく、上げる高さを調整して少し上に天井を貼りなおす、という方法で遮音シートなどを施工すると上階からの音を軽減できます。 |
デメリット②:室内の音が響きやすくなる
現し天井にすると、室内の音の反響が気になる場合があります。しかしこのデメリットは、住んだ後のインテリアの工夫で緩和することが可能です。
<対処法> ソファを置いたりファブリックが入ると気にならなくなることが多いです。入居後に気になるようなら、ラグを敷くなど音を吸収する布製品の分量を増やすのがオススメです。 |
デメリット③:冷暖房の効きが悪くなることがある
リノベーションで天井高を数㎝~10㎝程度上げた程度では、冷暖房効率は天井を上げる前とさほど差はつきません。
しかし、もともと天井が高い部屋の場合や、ロフトがあるタイプなどで大きく天井を上げる場合、冷暖房効率が下がります。
また、中古マンションには元々の断熱性能が不十分な物件もあるため、そういった物件で天井を上げたい場合は、併せて断熱アップの対策が必要です。
<対処法> 天井高がかなり高くなる場合は、シーリングファンを設置したり、サーキュレーターを使って空気を動かすと良いでしょう。 断熱性を上げて熱効率を高めるためには、窓や壁の断熱性アップを併せて検討しましょう。 特に窓は外気の影響を受けやすいため、シングルガラスの場合、ペアガラスや二重窓にするなど検討することで、冷暖房効率はもちろん結露を抑えるなど大きな効果が期待できます。 |
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5.天井をデザインすれば、室内のオリジナル度がグッと上がる
天井を上げることで得られる効果は、圧迫感の軽減に加え、実はデザイン面でのメリットの方が大きいといえます。
天井は自然と目に入る場所ながら、特に新築時には壁と同じ白色で仕上げるケースが多く、意匠面ではあまり冒険しない部分です。
だからこそ、リノベでちょっと差をつければ、グッと個性的に感じられる部分になるのです。
マイナスだと感じる天井の低さを逆手に、空間の広がりを得るのはもちろん、他にはないオリジナルの住まいへと変化させられます。
5-1.仕上げの違いでガラッと垢抜ける
現し天井は躯体がむき出しになるため、コンクリートのムラや石膏ボードをはがした後のボンド痕、支え位置の跡など、意図しない面白いデザインが出てくることも。
これは施工で生み出すことができない一点もののデザインで、空間のアクセントになります。
カフェのようなシャビーなこなれ感やインダストリアル系の無骨な感じなど、「個性的で素敵」と思うリノベ事例で見かけることも多いデザインです。
むき出しの躯体そのままにコンクリートの質感を楽しんでもよし、気に入った色で塗装するもよし、調湿性に期待して漆喰(しっくい)で仕上げるもよし、仕上げ方の違いでさまざまな楽しみ方があります。
コンクリートの質感をそのまま楽しむ
印象的なブラックで塗装
柔らかい質感を演出する左官仕上げに
5-2.配管やライティングレールをデザインのアクセントに
現し天井にすると、それまで天井裏にあった換気扇のダクトや照明のライティングレールが表出します。
これもまた、空間の雰囲気をデザインするパーツとなります。
必要なところに配置するのが基本ですが、照明をつなぐ鉄管の配置センスは、職人の腕の見せどころ。
配置センスには経験と技術がいるので、慣れている会社に頼みたいものです。
希望と似た事例の写真などを見ながら、「こんな感じにしたいけれど、可能ですか」と確認してから依頼する会社を決めるのがおすすめです。
レンジフードの換気ダクトをデザインの一部に
黒いライティングレールを整然とスクエアに回す
照明をつなぐ鉄管やライティングレールに躍動感を
5-3.躯体の凸凹が予期せぬデザインになる
現し天井にすると、上階の水まわり部分の下がった躯体が出現することも。
天井を開けてみるまで、躯体の様子は分らないないため、上階の床が下がっている場合などは、デザインとして楽しみましょう。
下がっている天井を活かして小屋のような空間に
6.まとめ
天井の低さが気になる物件に出合ったときは、そのデメリットを逆手に取り、室内の圧迫感の軽減とデザイン性アップで付加価値をつけられることをお伝えしてきました。
高い天井は贅沢なイメージで好まれる条件ではありますが、天井から得られる住み心地は高さだけではありません。一度現地を確認し、多角的に検討してみてください。
スムナラでは、建築士監修のもと、中古物件を買う前に知っておきたい注意点や、中古を買ってリノベする際のポイントやアイデアを紹介しています。リノベーションに構造や管理規約の制約はつきもの。制約を味方につけ、アイデアの幅を広げましょう。
イラスト/長岡伸行 紹介事例/ゼロリノベ